武尊とロッタン・ジットムアンノンの再戦は、2026年4月29日に東京・有明アリーナで開催された「ONE SAMURAI 1」のメインイベントで実現した。ONEフライ級キックボクシング暫定世界王座決定戦として行われた一戦は、武尊が5ラウンド2分22秒にTKO勝ち。2025年3月の初戦でわずか80秒のKO負けを喫した相手にリベンジを果たし、悲願のONE世界王座を獲得した。
しかし、この勝利には王座獲得以上の意味があった。武尊にとっては現役最後の試合であり、約30年にわたる格闘技人生を締めくくる大一番だったからだ。5月1日の引退記者会見では、初戦後に発症した首のヘルニアや、しびれ、片側の筋力低下といった症状も明らかになった。なぜ初戦と再戦で結果が逆転したのか。試合内容、両者の戦績、引退理由、そして再戦が持つ意味を整理する。
【試合結果】武尊がロッタンに5R TKO勝ち!暫定世界王座を獲得

2026年4月29日、ONE Championshipの日本大会「ONE SAMURAI 1」が有明アリーナで開催された。メインイベントは、武尊(team VASILEUS)とタイのロッタン・ジットムアンノンによるONEフライ級キックボクシング暫定世界王座決定戦。3分5ラウンド制で行われた。
試合は武尊が第5ラウンド2分22秒にTKO勝ち。ONE Championshipの公式英語記事と武尊の公式サイトはTKOと伝えており、日本語の公式試合結果速報ではKOと表記されている。いずれも、武尊の連打でロッタンがダメージを受け、レフェリーが試合を止めた決着を指す。
この勝利によって武尊は暫定世界王座を獲得。初戦の敗北を覆しただけでなく、自ら引退試合と位置付けた一戦で世界タイトルを手にした。
試合後の武尊は、ONEの公式記事によると、リング上でグローブをマットに置き、涙を交えて現役生活の終わりを伝えた。最後の試合を勝利で締めくくり、長年追い求めてきたONEのベルトを獲得したことが、この日の最大のニュースとなった。
なお、獲得したのは無条件の統一王座ではなく、あくまでONEフライ級キックボクシング暫定世界王座である。「世界王座獲得」という結果と「暫定王座」というタイトルの区分は、正確に押さえておきたい。
【試合ハイライト】80秒KO負けから逆転へ!5ラウンドの攻防を振り返る
今回の再戦を理解するうえで重要なのは、武尊が単に攻撃の手数を増やしたのではなく、初戦で決定打となった左フックを警戒しながら、攻防を組み立てた点だ。ONE Championshipの公式試合レビューと武尊公式サイトの試合詳細から、ラウンドごとの展開を振り返る。
第1ラウンド:初戦の左フックを警戒し、蹴りで距離を作る。 ロッタンは初戦と同じく、武尊の顎を狙う左フックを繰り出した。しかし、武尊はこれを防ぎながらカーフキックやローキック、ボディへの蹴りを使い、距離を詰めるだけでなく相手の足にも攻撃を加えた。開始直後から打ち合いに偏らず、攻撃を組み立てたことが、その後の展開につながった。
第2ラウンド:左フックで2度のダウンを奪う。 試合が大きく動いたのがこのラウンドだ。武尊はパンチの応酬の中で左フックを当て、ロッタンから最初のダウンを奪取。さらに打ち合いの中で再び左フックを決め、2度目のダウンを奪った。ロッタンは2度とも立ち上がったが、それまで強烈な打たれ強さを見せてきた相手に明確なダメージを与えた場面だった。
第3ラウンド:ロッタンが前蹴りで流れを引き戻す。 2度のダウンを奪われたロッタンも簡単には崩れない。前蹴りで武尊の腹部を攻め、パンチを織り交ぜて反撃した。武尊も被弾しながら前に出る姿勢を崩さず、互いに強打を交わす緊迫した展開が続いた。
第4ラウンド:ロッタンの圧力に耐え、終盤に反撃。 ロッタンが前進してパンチや前蹴りを繰り出し、武尊を苦しめる場面もあった。それでも武尊は下がり続けることなく、ジャブやフック、膝蹴りを返す。終盤には強烈な打撃を当て、最終ラウンドに向けて勝負の流れを引き寄せた。
第5ラウンド:右の強打からダウンを奪い、TKOで決着。 最終ラウンドも両者は激しく打ち合った。武尊の右ストレートがロッタンを大きく後退させ、続くパンチの連打でダウンを奪う。ロッタンは立ち上がったものの、武尊は攻撃を止めず、最後は右の強打などを含む猛攻で相手を追い詰めた。レフェリーが試合を止め、5ラウンド2分22秒で武尊の勝利が決まった。
第2ラウンドの2度のダウンに加え、最終ラウンドにもダウンを奪うなど、武尊は試合を通じてロッタンに大きなダメージを与えた。ONE Championshipの試合後記事も、再戦では武尊が合計4度のダウンを奪ったと伝えている。
試合の見どころは、最後の連打だけではない。初戦で敗因となった左フックを警戒しつつ、蹴りで距離を作り、パンチを当てる機会を増やしたこと。そして、ロッタンが反撃した第3、第4ラウンドでも攻める姿勢を失わなかったことが、最終ラウンドの勝利を支えた。
【対戦経緯】ONE 172の初戦から2026年4月29日の再戦まで
武尊とロッタンの対戦は、単なるタイトルマッチではなかった。初戦の衝撃的な敗北、武尊の再起、そして引退を前にしたリベンジ宣言という経緯が重なり、再戦そのものが大きな物語を持つようになった。
2025年3月23日、ONE 172。 待望の初対決は、ロッタンが開始直後に左フックを決め、わずか80秒でKO勝ちする結末となった。武尊にとっては、キャリアの中でも特に大きな衝撃を残す敗戦だった。
ONE Championshipの試合後記事では、初戦の武尊は胸骨や肋骨を負傷した状態で戦っていたことにも触れられている。初戦の結果を振り返る際には、単純な実力差だけで説明するのではなく、当時のコンディションも含めて考える必要がある。
2025年11月、デニス・ピューリック戦。 武尊は再起戦でデニス・ピューリックに2ラウンドTKO勝ちを収めた。この試合を経て、武尊は次の試合を現役最後の一戦とする意向を示し、ロッタンとの再戦を求めた。
2026年2月27日、再戦が正式決定。 武尊公式サイトは、4月29日の「ONE SAMURAI 1」でロッタンと再戦することが正式に決まったと発表した。試合はONEフライ級キックボクシング暫定世界王座決定戦として実施されることになった。
2026年4月29日、再戦でリベンジ達成。 武尊は5ラウンド2分22秒にTKO勝ち。初戦の80秒KO負けから約1年1か月を経て、同じ相手に勝利し、暫定世界王座を獲得した。
2026年5月1日、引退記者会見。 武尊は都内で引退会見を行い、首のヘルニアを発症していたことや、引退を決意した背景を説明した。4月29日の試合は、結果的に世界王者としての最後のリングとなった。
この流れから分かるのは、再戦が初戦のリベンジだけを目的にした試合ではなかったということだ。武尊は再起戦を経て最後の相手をロッタンに定め、暫定王座を懸けた再戦を実現させた。敗北への雪辱とキャリアの締めくくりが、一つの試合に重なっていた。
【戦績比較】武尊とロッタンの実績・記録はどう違う?
両者はともに打撃を武器とするトップファイターだが、競技キャリアの歩みや実績には違いがある。武尊は日本のK-1を中心にキックボクシングで複数階級を制し、ロッタンはムエタイで世界的な実績を築いてから、ONEのキックボクシングにも進出した。
| 比較項目 | 武尊 | ロッタン・ジットムアンノン |
|---|---|---|
| 出身国 | 日本 | タイ |
| 主な実績 | K-1三階級制覇、ISKA K-1ルール世界ライト級王座、ONEフライ級キックボクシング暫定世界王座 | ONEフライ級ムエタイ世界王座を獲得し、長期にわたり防衛 |
| 初戦 | 2025年3月、ONE 172で80秒KO負け | 2025年3月、ONE 172で80秒KO勝ち |
| 再戦 | 2026年4月29日、5R2分22秒TKO勝ち | 2026年4月29日、5R2分22秒TKO負け |
| 再戦後の記録 | プロ通算46勝5敗で現役引退 | ONE公式プロフィール上のONE戦績は17勝3敗 |
| 再戦後の状況 | 暫定世界王座を獲得し、現役生活を終了 | 武尊との再戦に敗北 |
戦績の比較では、数字の集計範囲に注意したい。武尊の46勝5敗は引退時のプロ通算記録であるのに対し、ロッタンの17勝3敗はONE Championshipでの戦績だ。異なる範囲の数字を並べて、どちらが総合的に強いかを判断することはできない。
武尊のキャリアは、2011年9月のKrushでのプロデビューから始まった。2013年にKrushフェザー級王座を獲得し、2015年にはK-1スーパー・バンタム級、2016年にはK-1フェザー級、2018年にはK-1スーパー・フェザー級の王座を獲得。K-1三階級制覇を達成した。その後、2023年にISKA K-1ルール世界ライト級王座を獲得し、2024年からONEに参戦した。
一方、ロッタンは2019年8月、ジョナサン・ハガティーを破ってONEフライ級ムエタイ世界王座を獲得。長期にわたる王座防衛で知られ、強烈なパンチと前進圧力、打たれ強さを武器に世界的な人気を獲得した。キックボクシングでも王座を狙う中で、武尊との再戦はキャリア上の重要な一戦だった。
実績の種類が異なる2人の対戦は、異なる競技文化で磨かれた打撃技術がぶつかる構図でもあった。再戦では武尊がパンチの精度と蹴りによる組み立てを生かし、ロッタンの強さを攻略した点が勝敗を分けた。
【引退理由の真相】首のヘルニアは現在どうなっている?
武尊の引退理由について、本人が2026年5月1日の引退記者会見で明かした大きな要因は、首のヘルニアだった。2025年3月のロッタン戦後から首の症状が出始め、しびれや片側の筋力低下が現れたと説明している。
武尊公式サイトに掲載された会見内容によると、本人は初戦の敗北後に首のヘルニアを発症したと振り返り、当時の試合が原因だった可能性にも言及した。ただし、発症の医学的な原因を断定したという内容ではない。
また、武尊は以前なら多少の被弾や練習中の無理を受け入れられたものの、症状を経験したことで、同じようには考えられなくなったと説明した。自分の身体にも限界があると知ったことを、単なる弱さではなく「逆に強さに変わった」と振り返っている。
その後の報道でも、武尊は首のヘルニアを引退の大きな理由として挙げている。ENCOUNTのインタビュー記事では、病院でヘルニアと診断され、手術にはリスクがあるため難しいと判断されたことや、医師からコンタクトスポーツを控えるよう勧められたことを明かしたと伝えられている。
つまり、引退の背景は、ロッタンに勝ったことで目標を達成したという理由だけではない。神経症状や筋力低下という身体的な問題があり、格闘技を続けることそのものがリスクを伴う状況になっていた。
では、2026年10月現在、首のヘルニアは完治したのか。 公開された会見や報道で確認できるのは、しびれや筋力低下があり、医師からコンタクトスポーツを控えるよう勧められたという説明までだ。症状が完治したという発表や、競技復帰を示す公式発表は確認できない。引退後の健康状態について、現役時代と同じように試合へ戻れると考える根拠はない。
引退発表を単なる惜別のニュースとして捉えるだけでは、本人が置かれていた状況を見落としてしまう。最後の試合で勝つことと、その先の人生を守ることは、武尊にとって切り離せない問題だった。
【プロの結論】なぜ武尊はロッタンに勝てたのか?再戦が残した意味
武尊の勝因を考える際、最も分かりやすいのは第2ラウンドと第5ラウンドのダウンだ。しかし、勝利を生んだのは一発のパンチだけではない。初戦で受けた攻撃を警戒しながら、試合全体の組み立てを変え、5ラウンドを通して勝負を続けたことに注目したい。
第一の要点は、初戦の決定打への対応だ。 2025年の初戦では、ロッタンの左フックが短時間で勝敗を決めた。再戦でもロッタンは同じ攻撃を狙ったが、武尊は防御と蹴りを交えながら対応し、相手の攻撃を受けるだけの展開を避けた。初戦の結果を踏まえた対策が、再戦の入り方に表れていた。
第二の要点は、パンチだけに依存しなかったことだ。 武尊は序盤からカーフキックやローキック、ボディへの蹴りを使い、距離を調整した。第2ラウンドで左フックを当てた場面は象徴的だが、その攻撃を生かすには、序盤から相手の動きに対応し、攻防の機会を作る必要があった。
第三の要点は、ロッタンの反撃を受けても攻撃を続けたことだ。 第3ラウンド以降、ロッタンは前蹴りやパンチで反撃し、第4ラウンドには強い圧力をかけた。それでも武尊は攻める姿勢を失わず、最終ラウンドで勝負を決めた。相手が倒れなければ試合は続くという、格闘技の厳しさを体現した展開だった。
もう一つ重要なのは、引退を前にした武尊の心理面だ。ONE Championshipの試合後記事では、武尊が再戦に向けて大きな恐怖やプレッシャーを抱えていたことも紹介されている。初戦で失神KO負けを経験し、再び同じ相手と向き合うことは、技術面だけでなく精神面でも容易ではなかったはずだ。
武尊は引退会見で、身体の弱さや限界を知ったことが、かえって今回の勝利につながったという趣旨の説明をしている。無理をすることだけが強さではなく、自分の状態を理解しながら戦うことも強さの一部だという考え方は、この再戦を振り返るうえで重要な視点になる。
ただし、この勝利だけをもって武尊がロッタンより常に強いと結論付けることはできない。初戦はロッタンが80秒でKO勝ちし、再戦は武尊が5ラウンドでTKO勝ちした。両者の対戦結果は1勝1敗となり、異なる条件と展開の中で、それぞれが相手を攻略した事実が残った。
今回の再戦が特別なのは、勝敗が逆転したことだけではない。武尊は現役最後の試合で、初戦の敗北を乗り越え、暫定世界王座を獲得した。ロッタンもまた、長年培ってきた打撃の強さを世界に示してきた選手であり、その相手を倒すことに大きな意味があった。
「武尊ロッタン」の再戦は、リベンジ、王座獲得、引退という三つの要素が重なった一戦だった。勝敗だけでなく、初戦から再戦までの経緯、試合中の修正、そして引退を決断した背景まで含めて見ることで、この試合が格闘技ファンに残した意味がより明確になる。
【武尊ロッタン】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:武尊とロッタンの再戦結果はどうなりましたか?
A1:2026年4月29日の「ONE SAMURAI 1」で、武尊がロッタンに5ラウンド2分22秒TKO勝ちしました。ONEフライ級キックボクシング暫定世界王座を獲得しています。
Q2:武尊はロッタンとの初戦で何秒KO負けしたのですか?
A2:2025年3月23日の「ONE 172」で、武尊はロッタンの左フックを受け、わずか80秒でKO負けしました。2026年4月の再戦では5ラウンドまで戦い、TKO勝ちでリベンジを果たしました。
Q3:武尊が引退した理由は何ですか?
A3:2026年5月1日の引退記者会見で、武尊は首のヘルニアを発症し、しびれや片側の筋力低下があったことを明かしました。医師からコンタクトスポーツを控えるよう勧められたことも、その後の報道で伝えられています。
武尊とロッタンの再戦は、2026年4月29日の「ONE SAMURAI 1」で武尊が5ラウンド2分22秒TKO勝ちを収め、暫定世界王座を獲得する結果となった。2025年の初戦で80秒KO負けを喫した武尊が、再戦では左フックで2度のダウンを奪い、最終ラウンドに勝負を決めた。
勝敗を分けたのは、初戦で受けた攻撃への対応、蹴りを交えた距離の調整、そしてロッタンの反撃を受けても攻撃を続けた姿勢だった。再戦の結果だけを見るのではなく、ラウンドごとの攻防を振り返ることで、武尊がどのように勝利へつなげたのかが見えてくる。
引退については、首のヘルニアによるしびれや筋力低下が大きな理由として本人から明かされた。武尊は最後の試合で宿敵へのリベンジと世界王座獲得を成し遂げ、現役生活を終えた。
今後、武尊の試合を振り返る際には、初戦のKO負けだけで評価するのでも、再戦の勝利だけで優劣を決めるのでもなく、両試合の内容とキャリア全体を合わせて見ることが大切だ。武尊ロッタン戦は、勝敗が逆転した試合であると同時に、武尊が自らの限界と向き合い、最後のリングで目標を達成した一戦として記憶されることになる。