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宇宙飛行士は虫歯があるとなれない?JAXA公式情報で治療・歯の詰め物・宇宙での歯痛を徹底解説

鷺沼 千尋 鷺沼 千尋 • 更新: • 公開: • 読了約 18 分
目次

宇宙飛行士になるには、虫歯が1本もないことが条件なのでしょうか。過去に虫歯を治療した人や、銀歯・セラミックなどの詰め物がある人は、宇宙飛行士の選抜で不利になるのか。こうした疑問に対し、JAXA(宇宙航空研究開発機構)は公式FAQで明確な見解を示しています。

治療済みの虫歯があっても、歯に詰め物があっても、それだけで宇宙飛行士になれないわけではありません。ただし、宇宙飛行士の歯科管理には、地上での健康管理とは異なる事情があります。とりわけ注目したいのが、船外活動時に宇宙服内が約0.3気圧になることと、飛行中には歯科医院のような治療環境を利用できないことです。

【結論】宇宙飛行士は虫歯があってもなれる?JAXA公式情報の答え

宇宙飛行士虫歯

まず押さえておきたいのは、虫歯になった経験があることと、飛行中に悪化する可能性のある歯を抱えていることは、同じではないという点です。

JAXA有人宇宙技術部門の公式FAQ「虫歯があると宇宙飛行士になれないって本当ですか」では、虫歯があっても治療してあれば問題はなく、歯に詰め物があっても大丈夫だと説明しています。宇宙飛行士は打ち上げ前に歯科医師の検診を受け、治療状態を確認します。

つまり、「過去に虫歯があったら宇宙飛行士になれない」「詰め物があると宇宙へ行けない」という理解は正確ではありません。大切なのは、歯の治療歴をゼロにすることではなく、宇宙飛行中に歯のトラブルが起きるリスクをできるだけ減らすことです。

この考え方は、宇宙飛行の特殊性を踏まえると理解しやすくなります。地上なら、歯が痛くなっても歯科医院を受診し、必要に応じてレントゲン撮影や虫歯の除去、詰め物の交換などを受けられます。しかし、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在している宇宙飛行士は、痛みが出たからといってすぐに地上の歯科医院へ行くことはできません。

そのため、出発前に問題の芽を見つけ、治療を済ませておくことが、宇宙飛行士の健康管理において重要な意味を持ちます。

【選抜基準の実態】虫歯ゼロが条件ではない?医学審査との違い

宇宙飛行士の選抜では、身体的な健康状態や、宇宙で任務を遂行できる適性が審査されます。ただし、公開されているJAXAの情報からは、虫歯の治療歴が一律に不合格の条件になるとは読み取れません。

JAXAが公表している2021年度の宇宙飛行士候補者募集では、応募者の健康状況申告や健康診断結果をもとに医学審査が実施されました。JAXAの選抜レポートでは、医学審査の詳細な評価基準について、具体的な数値などは開示できないと説明されています。

ここで注意したいのは、宇宙飛行士候補者として選ばれるための医学審査と、特定のミッションに向けた打ち上げ前の歯科検診は、目的が異なるということです。

選抜では、宇宙飛行士として活動できる健康状態や適性が評価されます。一方、打ち上げ前の歯科検診では、実際の飛行中に歯の痛みや詰め物の脱落などが起こるリスクを減らすことが重視されます。

それぞれの違いを整理すると、次のようになります。

確認項目 目的・内容 虫歯との関係
宇宙飛行士候補者の選抜 応募資格、健康状態、医学的・心理的な適性などを審査する 公開情報では、虫歯の治療歴ゼロが一律の条件とはされていない
定期的な医学検査 宇宙飛行士としての健康状態を継続的に確認する 健康管理全体の一環として状態を維持する
打ち上げ前の歯科検診 詰め物の状態や飛行中に悪化する可能性のある歯を確認する 必要な治療を行い、飛行中の歯科トラブルを予防する
宇宙滞在中の医療対応 限られた医療用品と地上からの支援で健康問題に対処する 歯痛や詰め物の脱落などに備えた対応が必要になる

なお、上表はJAXAなどの公開情報をもとに、それぞれの役割を整理したものです。すべての選抜段階で用いられる詳細な医学基準や、個別の歯科検査項目が網羅的に公開されているという意味ではありません。

宇宙飛行士を目指す人にとっては、虫歯があったことだけを理由に夢を諦める必要はありません。気になる歯があるなら、早めに歯科医師に相談して治療を済ませ、健康状態を適切に管理することが現実的な対応です。

【約0.3気圧の落とし穴】船外活動で虫歯が痛む理由とは

宇宙飛行士の虫歯問題を理解するうえで、特に重要なのが船外活動時の気圧です。

JAXAの公式FAQと、日本歯科医師会が運営する「テーマパーク8020」の解説によると、船外活動時の宇宙服内は約0.3気圧に減圧されています。一方、国際宇宙ステーションの船内はおおむね1気圧に保たれています。

つまり、宇宙飛行士は船外活動で減圧された環境に身を置き、活動を終えて船内へ戻ると、再び約1気圧の環境に戻ります。この気圧の変化が、状態の悪い歯に痛みを引き起こすことがあるのです。

では、なぜ気圧が変わると歯が痛むのでしょうか。

虫歯が進行した歯や、過去に治療した歯の内部に空洞が残っている場合、その空洞に閉じ込められた空気が気圧変化の影響を受けることがあります。周囲の圧力が下がると、空洞内の空気が膨張し、歯の内部に圧力がかかって痛みが生じる可能性があります。

反対に、船外活動を終えて船内の約1気圧の環境へ戻る際には、空洞内と周囲との圧力差によって、歯が押し込まれるような痛みが起こる場合もあります。空洞と外部の間で空気が移動し、圧力差が解消されるまで、痛みが続く可能性があるという仕組みです。

この現象は、歯科領域では気圧変化に関連する歯痛として知られています。虫歯や治療状態の不十分な歯があると、通常の生活では気にならなかった問題が、特殊な圧力環境で表面化することがあります。

ただし、約0.3気圧だから必ず虫歯が痛むわけではありません。痛みが起こるかどうかは、歯の状態や空洞の有無、治療の状態などによって異なります。JAXAが説明しているのは、歯の状態によって痛みが生じる可能性があるため、飛行前の治療と検診が必要だということです。

また、宇宙空間全体が一律に0.3気圧という意味でもありません。約0.3気圧という数値は、船外活動時に宇宙服内を減圧することに関するものです。ISS船内の環境と混同しないことも、正しく理解するためのポイントです。

【打ち上げ前の歯科検診】詰め物や治療済みの歯はどう確認する?

虫歯を治療していれば問題ないとされる一方、宇宙飛行士が打ち上げ前に歯科検診を受けるのはなぜでしょうか。

JAXAの説明では、歯科医師が確認するポイントとして、外れそうになっている詰め物がないか、飛行中に悪化しそうな歯がないか、という点が挙げられています。

ここで重要なのは、詰め物があるかどうかだけではなく、詰め物が安定しているか、治療した歯に新たな問題が生じていないかという点です。

例えば、過去に虫歯を治療して詰め物を入れた歯でも、時間がたつにつれて詰め物が劣化したり、周囲から再び虫歯が進行したりすることがあります。治療済みであることは安心材料ですが、それだけで将来のトラブルが完全になくなるわけではありません。

打ち上げ前の歯科検診では、こうした問題を見つけ、必要に応じて治療や処置を行います。検診の具体的な内容は個々の歯の状態によって異なりますが、飛行中に急激な痛みや治療の必要性が生じるリスクを減らすことが大きな目的です。

また、歯の詰め物があることと、治療が不十分であることは区別しなければなりません。銀歯やセラミックなどの詰め物があるだけで宇宙飛行士になれない、という根拠はJAXAの公式説明にはありません。

むしろ、治療を終えた歯を適切に維持し、飛行前に問題がないことを確認する姿勢が大切です。これは宇宙飛行士だけに限った話ではありませんが、宇宙では医療へのアクセスが制限されるため、事前の確認が特に重要になります。

【宇宙で歯が痛んだら?】ISSの歯科用器具と応急処置の実態

では、どれだけ事前に準備していても、宇宙滞在中に虫歯や歯痛などの問題が発生したら、どう対応するのでしょうか。

国際宇宙ステーションには医療用品が用意されていますが、地上の歯科医院と同じ設備がそろっているわけではありません。JAXAの「宇宙飛行士の健康管理」に関する解説でも、宇宙滞在中は人員や設備が限られており、搭乗している医師が毎回いるわけでもないと説明されています。

NASAも医療運用に関する解説で、ISSの医療キットは基本的なものに限られ、宇宙飛行士は出発前に医療訓練を受けると紹介しています。宇宙では、地上の医療機関と同じように、あらゆる症状に対応できるとは限りません。

歯科については、NASAの技術資料に、宇宙船やISS向けの歯科器具の例として、歯科用ミラー、仮封材、局所麻酔薬、抜歯に使用する器具などが記載されています。ただし、これは技術資料に記録された器具構成の例であり、2026年時点のISSに搭載される全機材が常に同一であることを示すものではありません。

宇宙で歯痛が起きた場合の対応は、一般的に次のような考え方になります。

1. 症状を把握し、地上の医療担当者と連携する

痛みの程度や歯の状態を確認し、地上の医療支援チームと連絡を取りながら対応を決めます。宇宙飛行士は医療用品や訓練内容に基づいて対処し、症状に応じて医療担当者の指示を受けます。

2. 搭載されている医薬品などで痛みを抑える

痛みがある場合には、搭載されている鎮痛薬などを、医療担当者の指示や定められた手順に従って使用することが考えられます。ただし、鎮痛薬で痛みが軽くなっても、虫歯や歯の内部の問題そのものが治ったとは限りません。

3. 痛みが強く、ほかの方法で対処できない場合は、より踏み込んだ処置を検討する

日本歯科医師会の「テーマパーク8020」では、痛み止めで十分に抑えられない場合、フライトサージャン(宇宙飛行士の健康管理を担う医師)の指導の下で、ほかの宇宙飛行士が抜歯する可能性についても説明しています。実際にどの処置を選ぶかは、症状や利用できる器具、医学的な判断などによって異なります。

歯を削る処置や精密な詰め物の作製など、一般的な歯科医院で行う治療をそのまま宇宙で再現するのは困難です。無重力環境では水分や削った粉が飛散する問題もあり、設備面の制約も大きいためです。

そのため、宇宙での歯科対応は、予防、症状の評価、応急処置、地上からの医療支援を組み合わせて行うことになります。

なお、症状が深刻な場合に帰還を早めるかどうかは、歯痛だけで自動的に決まるわけではありません。症状の重さや任務への影響、医学的なリスクなどを踏まえた判断が必要です。

【噂の出どころを検証】毛利衛氏の選抜時の逸話とJAXAの見解

「虫歯があると宇宙飛行士になれない」という話が広まった背景には、宇宙飛行士の選抜と歯科治療をめぐる過去のエピソードもあります。

日本歯科医師会の「テーマパーク8020」は、宇宙飛行士の毛利衛氏に関する逸話を紹介しています。同サイトによると、毛利氏は1995年の選抜で、親知らずと虫歯を治療しないまま二次選抜に臨み、不合格通知に「歯科治療の必要を認める」という趣旨の記載があったと回想しています。

この逸話だけを読むと、虫歯があること自体が宇宙飛行士になれない理由だったように感じる可能性があります。しかし、このエピソードから、虫歯が不合格の唯一の理由だったと断定することはできません。また、過去の選抜時の経験と、現在公開されているJAXAの説明は、分けて考える必要があります。

JAXAの公式FAQでは、治療済みの虫歯や詰め物があっても問題ないと説明されています。打ち上げ前の歯科検診も、飛行中に悪化する可能性のある歯を確認し、必要な治療を行うためのものです。

加えて、「ファン!ファン!JAXA!」のFAQでも、同じ質問に対して、治療済みの虫歯や詰め物は問題ないこと、船外活動時の気圧変化が歯痛につながる可能性があることが解説されています。

複数の公式・専門機関の情報に共通しているのは、虫歯の経験そのものを問題視するのではなく、飛行中に支障をきたす可能性のある歯の状態を管理するという考え方です。

つまり、ネット上で見かける「虫歯が1本でもあれば即不合格」という説明は、少なくともJAXAが現在公開している情報とは一致しません。選抜に関する具体的な医学基準には非公開の部分もありますが、虫歯歴ゼロという条件が一律に設けられていると理解するのは適切ではありません。

【プロの結論】宇宙飛行士の歯の健康から分かる3つの本質

宇宙飛行士と虫歯の関係を調べると、単に「虫歯があっても大丈夫か」という疑問以上に、特殊な環境で健康を維持するための考え方が見えてきます。

第一に、病歴と現在の健康状態は分けて考える必要があります。過去に虫歯があったとしても、治療が済み、現在の状態に問題がなければ、それだけで宇宙飛行士になれないわけではありません。歯科治療を受けた事実そのものと、治療が不十分なままになっている状態を混同しないことが大切です。

第二に、宇宙では小さな健康問題が任務全体に影響する可能性があります。地上なら比較的容易に受けられる歯科治療も、宇宙では設備や人員が限られます。歯の痛みが強くなれば、作業への集中や任務の遂行にも影響しかねません。事前にリスクを減らすことには、個人の健康を守るだけでなく、ミッション全体を支える意味があります。

第三に、健康管理は選抜時だけで終わるものではありません。JAXAは宇宙飛行士の健康管理について、定期的な医学検査、飛行前の準備、宇宙滞在中の医療対応、帰還後の健康回復まで含めて説明しています。歯科検診も、こうした継続的な健康管理の一部として捉えられます。

宇宙飛行士を目指す人が参考にしたいのは、「虫歯を経験しないこと」だけを目標にするのではなく、虫歯を早期に発見し、適切に治療し、その後も状態を維持するという姿勢です。これは宇宙飛行士を目指す人に限らず、日常生活で歯の健康を守るうえでも役立つ考え方です。

【宇宙飛行士虫歯】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:虫歯が1本でもあると宇宙飛行士になれませんか?
A1:いいえ。JAXAの公式FAQでは、虫歯があっても治療してあれば問題ないと説明されています。ただし、宇宙飛行士の選抜では医学的な適性が審査され、打ち上げ前にも歯科検診が行われます。

Q2:銀歯やセラミックの詰め物があると不合格になりますか?
A2:詰め物があること自体は問題ないとJAXAは説明しています。重要なのは、詰め物が外れそうになっていないか、治療した歯に新たな問題が生じていないかという点です。

Q3:宇宙で虫歯が痛くなったら、歯を抜くしかないのでしょうか?
A3:必ず抜歯になるわけではありません。症状を評価し、搭載されている医薬品などによる対応や地上からの医療支援を検討します。痛みを抑えられず、ほかの方法では対処が難しい場合には、医師の指導の下で抜歯が検討される可能性があります。

Q4:船外活動で歯が痛くなるのは、宇宙服内の気圧が低いからですか?
A4:気圧の変化が原因の一つになります。船外活動時の宇宙服内は約0.3気圧で、ISS船内はおおむね1気圧です。虫歯などで歯に空洞があると、内部の空気と周囲の圧力との差によって痛みが起こる場合があります。

Q5:宇宙飛行士は打ち上げ前に必ず歯科検診を受けるのですか?
A5:JAXAの公式説明では、宇宙飛行士は打ち上げ前に歯科医師の検診を受け、外れそうな詰め物や飛行中に悪化しそうな歯がないか確認します。検診は、宇宙滞在中の歯科トラブルを予防するための重要な準備です。

宇宙飛行士は虫歯があるとなれないのか。この疑問に対するJAXAの公式情報の答えは、治療済みの虫歯や詰め物があること自体は問題ない、というものです。虫歯の経験があるだけで、宇宙飛行士になる道が閉ざされるわけではありません。

一方で、船外活動時の約0.3気圧という環境では、虫歯や不十分な治療によってできた歯の空洞が、気圧変化に伴う痛みの原因になる場合があります。宇宙では地上の歯科医院と同じ治療を受けることが難しいため、打ち上げ前の歯科検診と必要な治療が欠かせません。

「ファン!ファン!JAXA!」や日本歯科医師会の「テーマパーク8020」が紹介する内容も、こうした考え方と一致しています。虫歯の有無だけで判断するのではなく、治療の状態、飛行中に悪化するリスク、事前の健康管理まで含めて理解が必要です。

宇宙飛行士を目指している人は、虫歯の治療歴を過度に心配するよりも、気になる症状を放置せず、歯科医師と相談しながら口腔内の健康を維持することを心がけましょう。宇宙という限られた医療環境で安全に任務を遂行するためには、日頃からの歯のケアと、出発前の確実な準備が大きな意味を持っています。

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トレンドリサーチャー 鷺沼 千尋
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映画ライター歴10年。公開日と配信開始日は公式サイトで確認し、あらすじはネタバレ範囲を分けて書いています。

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