夜空を彩る花火をつくり、打ち上げる花火師。華やかな仕事に見える一方で、実際の年収や新人の給料、夏場の働き方、資格取得の難しさは、就職を考える人にとって気になるところです。
2026年10月時点で、厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」には、令和7年賃金構造基本統計調査を加工した花火師関連の賃金データが掲載されています。加えて、2026年9月更新の花火製造・打ち上げ関連の求人では、月給18万円から50万円、想定年収252万円から700万円という募集条件も確認できます。ただし、これらの数字は同じものを測っているわけではありません。
【2026年最新】花火師の年収は550万円?統計の正しい読み方

花火師の年収を調べる際、まず確認したいのが厚生労働省のjob tagです。2026年10月時点の掲載データでは、令和7年賃金構造基本統計調査を加工した全国の賃金(年収)は550万円、平均年齢は41.7歳となっています。
ただし、この550万円を「日本で働く花火師の平均年収」とそのまま受け取るのは正確ではありません。job tagの説明によると、花火師の賃金情報は、厚生労働省編職業分類の「化学製品製造工」など、関連する職業分類の統計を利用しています。掲載値が花火師だけの就業者を集計した数字とは限らないことも、同サイトに明記されています。
つまり、550万円は花火師の収入を考えるうえでの参考指標ですが、個々の花火会社で働く職人の給与水準を直接示す数字ではありません。製造業の別職種などが統計に含まれる可能性があるためです。
また、2026年3月24日に厚生労働省が公表した令和7年賃金構造基本統計調査は、雇用形態や勤続年数、経験年数などに応じた賃金を把握するための資料です。job tagの職業別データは、この調査結果を加工して掲載しています。
年収の数字を比較するときは、少なくとも次の3点を分けて考える必要があります。
- 実際に花火会社で働く職人の年収なのか、関連職業分類を含む統計なのか。
- 基本給を示しているのか、賞与や残業代などを含む年収なのか。
- 新人の給与なのか、経験を積んだ従業員を含む全体の数字なのか。
特に、求人の月給と統計上の年収を直接比較する場合は注意が必要です。月給を12倍した金額は賞与や各種手当を反映しないため、実際の年間収入とは異なることがあります。
【新人の月給はいくら?】花火師の給料と最新求人を比較
花火師を目指す人にとって、平均年収以上に現実的なのが、未経験で入社した場合の月給です。厚生労働省のjob tagには、関連する職業分類のハローワーク求人賃金も掲載されています。
同サイトによると、令和7年度の求人賃金は全国平均で月額23.3万円でした。加えて、2026年6月の月別求人賃金は24.0万円で、前年同月より1.1万円高くなっています。ただし、これも花火師だけの求人に限定した数字ではありません。
一方、花火会社の個別求人を見ると、募集条件は企業によって大きく異なります。2026年9月3日更新の響屋大曲煙火株式会社の求人では、花火の製造・打ち上げに関わる正社員を募集し、月給18万円から50万円、想定年収252万円から700万円を提示していました。賞与は年2回、昇給は年1回とされ、給与や役職は年功序列ではなく、個人の適性・能力によって変わる仕組みです。
この求人は未経験者も応募可能としていますが、給与の上限50万円が新人に適用されるという意味ではありません。幅のある給与表示は、担当業務や能力などによって条件が異なることを示しています。
山梨県の齊木煙火本店の採用情報にも、花火師・花火製造の月給20万円からという募集条件が掲載されていました。ただし、同社の採用ページでは採用予定人数に達したため募集を一時休止すると案内されています。現在応募できる求人と、過去に掲載された募集条件は区別して確認しましょう。
主な数字を整理すると、次のようになります。
| 比較対象 | 金額・条件 | 読み解き方 |
|---|---|---|
| job tagの賃金(年収) | 550万円 | 令和7年賃金構造基本統計調査を加工した関連職業分類の指標。花火師だけの平均ではない |
| ハローワーク求人賃金 | 令和7年度は月額23.3万円、2026年6月は24.0万円 | 関連職業分類の求人賃金。花火師専門の求人平均ではない |
| 響屋大曲煙火株式会社の求人 | 月給18万~50万円、想定年収252万~700万円 | 2026年9月3日更新の個別求人。経験・能力などにより条件が異なる |
| 齊木煙火本店の採用情報 | 月給20万円~ | 掲載された募集条件。採用ページでは募集一時休止を案内 |
この比較から分かるのは、花火師の収入を一つの平均値だけで判断するのは難しいということです。就職先の規模や給与体系、担当する仕事、賞与の有無によって、実際の年収は変わります。
新人が求人を見るときは、月給だけでなく、試用期間中の条件、固定残業代の有無、賞与の支給実績、昇給の基準、交通費、社会保険なども確認してください。月給が高く見えても、残業時間や休日の条件が異なれば、働き方を含めた待遇の評価は変わってきます。
【経験年数で給料は変わる?】花火職人の年収を左右する要素
花火師の収入は、勤続年数だけで自動的に上がるとは限りません。どの工程を担当できるか、どの程度の技術を持っているか、現場の安全管理や後輩の指導まで任されるかといった要素が、キャリアを考えるうえで重要です。
花火づくりには、火薬を扱う製造工程、花火玉の準備、打ち上げ現場の設営、打ち上げ、終了後の撤収など、複数の仕事があります。製造技術と打ち上げ技術は関連していますが、必要な技能は同じではありません。
日本煙火協会の説明では、花火玉の運搬や打ち揚げ筒の固定などの補助作業から経験を積み、段階的に高度な打ち上げ技術を身につけていきます。製造現場でも、配合、造粒、玉込め、玉貼りなど、それぞれの工程に専門的な技術が大切です。
経験を積んだ後に目指せる仕事には、次のようなものがあります。
- 製造技術の専門家:花火の品質を安定させ、複雑な製品の製作にも対応する。
- 打ち上げ現場の責任者:設営や機材配置、当日の作業、安全確認などを管理する。
- 保安管理の担当者:関係法令や安全基準を理解し、保安管理に関する責任ある業務を担う。
- 企画・演出の担当者:イベントの目的や会場に応じて、花火ショーの構成や演出を考える。
ただし、これらの役割に対応する年収が全国一律に決まっているわけではありません。経験年数別の賃金についても、job tagの関連職業分類のデータを花火師だけの実績として読み替えることはできません。
経験者の転職では、募集要項の「経験者優遇」という表現だけで判断せず、どの技術が評価されるのかを確認することが大切です。製造経験が必要なのか、打ち上げの現場経験が必要なのか、保安管理や資格が求められるのかによって、応募できる求人も変わります。
また、個別求人の中には、能力や適性に応じて給与・役職を決めると明示している企業もあります。勤続年数だけではなく、習得した技能と担当できる仕事の幅を、具体的に説明できるようにしておくことが収入アップにつながります。
【賞与・残業手当・年間休日】花火師の繁忙期はどれくらい忙しい?
花火師の働き方で特徴的なのが、季節によって仕事量や勤務時間が変わることです。厚生労働省のjob tagは、花火の打ち上げが土日などの夜間に開催されることが多く、準備や撤収が深夜まで及ぶ場合もあると説明しています。そのため、午後から出勤したり、平日に代休を取ったりする勤務形態もあります。
特に忙しいのは、花火大会が集中する7月から8月です。夏の繁忙期には臨時作業員が雇用されることもあり、製造工場での仕事と打ち上げ現場での仕事では、忙しくなる時期や時間帯が異なります。
ただし、花火師の仕事が夏だけに限られるわけではありません。秋祭りや運動会、スポーツ大会、テーマパークのイベントなど、夏以外にも花火が使われる機会があります。会社によっては、年間を通じて製造や打ち上げの仕事を行っています。
2026年9月更新の響屋大曲煙火株式会社の求人では、勤務時間は午前8時30分から午後5時30分、実働7時間30分とされています。一方で、季節によって残業時間や仕事内容が変わること、5月から8月は繁忙期のため基本的に週休制となることも記載されています。シーズンオフには、年末年始休暇や、夏の繁忙期が終わった後の長期休暇が設けられています。
このように、年間休日や休暇の取り方は会社ごとに違います。「花火師は休みが少ない」「夏以外は仕事がない」と一律に考えるのではなく、実際の勤務条件を確認する必要があります。
賞与や残業手当についても同様です。個別求人には賞与年2回、昇給年1回とする例がある一方、すべての花火会社が同じ制度を採用しているわけではありません。残業代や深夜勤務の手当、休日出勤時の扱い、代休の取得方法については、採用時に具体的な説明を受けましょう。
年収を比較する際は、基本給と賞与の合計だけでなく、残業や深夜勤務による収入がどれほど含まれるのかも重要です。忙しい時期に手当が増える会社と、固定給を中心とする会社では、同じ年収でも働き方が異なります。
【花火師になるには】必要な資格と煙火消費保安手帳の取得条件
花火師になるために、特定の大学や専門学校を卒業していなければならないわけではありません。厚生労働省のjob tagによると、入職時点で特別な学歴や資格が必須とされているわけではなく、花火会社で補助作業から経験を積み、技術を習得する道があります。
ただし、花火会社への就職そのものが簡単とは限りません。日本煙火協会は、煙火関係事業所の多くが小規模で、定期採用を行う体制が限られていると説明しています。縁故などによる不定期・少人数の採用が多く、夏の臨時作業員として働きながら経験を積むケースもあります。
資格については、花火師の仕事をすべて一括りにせず、役割ごとに考えることが大切です。
火薬類製造保安責任者は、煙火を含む火薬類の製造に関する保安管理を担うための国家資格です。経済産業省の案内では、甲種・乙種・丙種などの区分があり、製造する火薬類の種類や数量などによって必要な区分が決まります。試験の受験資格には、学歴、実務経験、年齢などの制限はありません。
一方、製造保安責任者の資格を持っていれば、経験なしですぐに花火工場の責任者になれるわけではありません。日本煙火協会は、資格の取得に加え、継続的な知識の習得と実地経験が必要だと説明しています。
打ち上げに関わる人が知っておきたいのが、煙火消費保安手帳です。これは国家資格とは異なり、日本煙火協会が交付する業界の自主保安制度に基づく手帳です。煙火消費の技能を認められ、日本煙火協会が認めた地区組織の保安講習を受講した人が交付対象となります。
手帳の所持者には毎年保安講習を受ける義務があり、煙火の消費に従事する際には手帳を携帯することが大切です。花火会社に就職し、補助作業などを通じて技能を習得してから取得を目指すのが基本的な流れです。
したがって、資格取得だけを先に目指せば花火師として働ける、という単純な仕組みではありません。就職先を探す段階で、製造と打ち上げのどちらに携わりたいのかを考え、企業が求める経験や資格、教育体制を確認することが現実的です。
【将来性と収入アップ】花火師として長く働くための判断基準
花火師の将来性を考える際には、伝統的な花火大会だけでなく、花火が使われる場面の広がりにも目を向けたいところです。日本煙火協会は、スポーツ大会やテーマパークのイベントなど、エンターテインメント分野での花火の演出にも触れています。
実際に、2026年9月更新の響屋大曲煙火株式会社の求人は、新規の海外事業に伴う製造部門の増員を掲げていました。同社は花火の製造・打ち上げに加えて、輸出やショーのデザインなどにも取り組んでいます。これは一企業の事例ですが、製造技術を海外展開や演出企画につなげるキャリアの可能性を示しています。
ただし、海外展開やイベント需要があるからといって、花火師全体の年収が今後必ず上がるとは限りません。実際の収入は、会社の受注状況、給与制度、本人の技能、担当する仕事などに左右されます。
収入アップを目指すなら、次のような方向性を検討するとよいでしょう。
- 製造技術を磨く:製造工程への理解を深め、品質を安定させる技術や、難易度の高い製作に対応する能力を身につける。
- 安全管理の知識を深める:関連法令や保安管理について学び、必要な資格の取得を目指す。
- 打ち上げの現場経験を積む:設営、機材管理、当日の進行、安全確認など、担当できる業務の幅を広げる。
- 企画・演出にも関わる:花火の製造だけでなく、イベントの構成やショーの設計など、関連する仕事への理解を深める。
- 給与制度を比較する:昇給基準、賞与の実績、役職制度、資格手当、繁忙期の勤務条件を確認し、自分の技能が評価される職場を選ぶ。
花火師に向いているのは、ものづくりを地道に続けられる人、細部の違いに気づける人、安全上のルールを守れる人、チームで協力できる人です。華やかな打ち上げだけでなく、製造や準備、片付けといった仕事にも責任を持って取り組めることが大切です。
反対に、夏のイベントだけに関わりたい人や、毎週決まった曜日に必ず休みたい人、短期間で高収入を得ることを最優先に考える人は、実際の勤務条件を慎重に確認したほうがよいでしょう。花火会社によって働き方は違うため、職業全体のイメージだけで判断するのは避けたいところです。
【花火師年収】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:花火師の平均年収は550万円ですか?
A1:厚生労働省のjob tagには550万円という賃金(年収)が掲載されています。ただし、令和7年賃金構造基本統計調査を加工した関連職業分類の数値であり、花火師だけを対象にした平均年収ではありません。実際の収入は勤務先や経験、給与制度などによって異なります。
Q2:未経験から花火師になる場合、月給はいくらですか?
A2:個別求人の一例では、2026年9月更新の響屋大曲煙火株式会社が月給18万円から50万円を提示しています。ただし、この金額は求人全体の募集幅で、新人の給与が一律に決まっているわけではありません。未経験者向けの初任給、試用期間、賞与、残業代などを個別に確認しましょう。
Q3:花火師になるには資格が必要ですか?
A3:花火会社への入職時に、特定の資格や学歴が一律に必須とされているわけではありません。一方、煙火の製造・保安管理には、業務や規模に応じた火薬類製造保安責任者などの資格が関係します。また、打ち上げに従事するには、技能の習得や保安講習を経て煙火消費保安手帳の交付を受けることが大切です。
2026年10月時点の花火師の年収を考えるうえで、厚生労働省のjob tagに掲載された550万円という数字は、重要な参考情報です。しかし、関連職業分類を含む統計であるため、花火師だけの平均年収として扱うことはできません。
一方、実際の求人には月給18万円から50万円という幅のある募集条件があり、賞与や昇給、休日の制度も企業によって異なります。新人の給与を知りたい人は、職業全体の平均値よりも、未経験者を対象にした具体的な求人条件を確認することが大切です。
花火師の仕事は、製造、打ち上げ、安全管理、企画・演出など、経験を積むほど関われる業務が広がる可能性があります。ただし、経験年数が長ければ必ず高収入になるわけではありません。どの技術が評価され、どのような役割を担えば昇給につながるのかを、勤務先ごとに見極める必要があります。
花火師を目指すなら、年収の数字だけでなく、初任給、賞与、残業手当、繁忙期の休日、資格取得支援、将来のキャリアまで確認すること。それが、憧れの仕事を長く続け、技能に見合った収入を得るための現実的な第一歩です。