invisible hit counter
ホーム 美容・ヘアケア アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞2026|『国宝』の結果と歴代受賞作を徹底解説

アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞2026|『国宝』の結果と歴代受賞作を徹底解説

土谷 亮平 土谷 亮平 • 更新: • 公開: • 読了約 25 分
目次

2026年の第98回アカデミー賞で、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したのは、ギレルモ・デル・トロ監督の映画『フランケンシュタイン』でした。受賞者はマイク・ヒル、ジョーダン・サミュエル、クレオナ・フューレイの3人です。一方、日本映画『国宝』は同部門にノミネートされたものの、受賞には届きませんでした。

2026年3月15日(米国現地時間)に開催された授賞式は、日本映画の伝統的な歌舞伎化粧やかつらの技術が、世界最高峰の映画賞で評価される歴史的な機会にもなりました。1981年に新設されたこの部門は、単に顔を美しく見せる技術を競う賞ではありません。俳優の年齢や身体、時代背景、架空の生物までを、どれだけ説得力のある姿としてスクリーンに成立させたかが問われます。

【2026年最新】第98回は『フランケンシュタイン』が受賞、『国宝』は惜しくも届かず

アカデミーメイクアップ&ヘアスタイリング賞

第98回アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞は、2025年公開作品を対象に競われました。米映画芸術科学アカデミーの公式結果によると、受賞作は『フランケンシュタイン』。日本からは『国宝』が最終候補の5作品に入り、歌舞伎の化粧とかつらを支える職人技が国際的な舞台で認められました。

2026年の受賞者とノミネート作品は、次のとおりです。

  • 受賞:『フランケンシュタイン』 — マイク・ヒル、ジョーダン・サミュエル、クレオナ・フューレイ
  • 『国宝』 — 豊川京子、日比野直美、西松辰一
  • 『罪人たち(Sinners)』 — ケン・ディアス、マイク・フォンテイン、シュニカ・テリー
  • 『スマッシング・マシーン』 — カズ・ヒロ、グレン・グリフィン、ビョルン・レーベイン
  • 『The Ugly Stepsister』 — トーマス・フォルドバーグ、アンネ・カトリーネ・ザウアーベア

授賞式は米国ロサンゼルスのドルビー・シアターで現地時間3月15日に開催されました。日本時間では3月16日の結果発表として報じられています。米国現地の日付と日本の報道日が異なるため、ニュースを検索する際には両方の日付を押さえておくと情報を整理しやすくなります。

なお、『国宝』のノミネートが画期的だった理由は、日本人が初めてメイクアップ分野でアカデミー賞に関わったから、という単純な話ではありません。日本出身のカズ・ヒロは、外国映画の仕事で2018年と2020年に同部門の受賞歴があります。今回の歴史的な点は、日本映画のメイクアップ・ヘアスタイリング担当者が、この部門で初めてノミネートされたことです。映画『国宝』の制作チームにとっても、日本の伝統芸能を支える技術が国際的な評価の対象になったことは大きな成果でした。

【賞の正体】メイクアップ&ヘアスタイリング賞は何を評価するのか

アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞は、映画におけるメイクアップとヘアスタイリングの優れた功績を表彰する部門です。現在の名称になる以前は「メイクアップ賞」と呼ばれていました。

この部門が競争部門として設けられたのは1981年。第54回アカデミー賞で初めてノミネート作品が選ばれ、受賞作となった『狼男アメリカン』では、特殊メイクの第一人者リック・ベイカーが受賞しました。それ以前にも、1964年の『七つの顔の大悪魔』でウィリアム・タトル、1968年の『猿の惑星』でジョン・チェンバースがメイクアップの功績をたたえる名誉賞を受けています。

競争部門が設けられた背景には、映画の外見表現を支える技術に対する評価を、より明確にする必要性がありました。俳優の外見を変える仕事は、演技や衣装、撮影と同じように、作品の世界観を成立させる専門的な創作活動です。

評価対象は、日常的な化粧だけではありません。アカデミーの規定では、俳優の顔・頭部・身体に直接施す化粧品、立体素材、人工装具、付けひげなどによる外見の変化がメイクアップに含まれます。ヘアスタイリングは、髪型の造形、かつら、ヘアピースなどによる実際の外見の変化を指します。

そのため、次のような技術が評価対象になります。

  • 特殊メイク:俳優を老人、別人、怪物、歴史上の人物などに変身させる造形技術。
  • プロステティクス:シリコンなどの素材で作った人工装具を用いて、顔や身体の形状を変える技術。
  • 時代考証に基づく化粧:歴史上の人物や特定の文化にふさわしい顔立ち、肌の表現、化粧法を再現する仕事。
  • かつら・ヘアスタイリング:役柄や時代、年齢、身分、職業を髪型から表現する技術。
  • 撮影を通じた再現性:異なる日程で撮影しても、同じ人物の外見や傷、髪型などを一貫して再現する管理能力。

ここで誤解しやすいのが、見た目を変える技術ならすべて同じように評価されるわけではないという点です。デジタル合成やCGによる変身表現は視覚効果部門とも関係しますが、この賞では実際に俳優へ施すメイクアップやヘアスタイリングの仕事が中心となります。映像全体の完成度だけでなく、現場でどのような技術を用いて外見を作り上げたかが重要です。

【歴代受賞作一覧】1981年から2026年までの代表作と受賞者

歴代受賞作を振り返ると、メイクアップ&ヘアスタイリング賞が評価してきた技術の幅広さが分かります。怪物の造形、歴史上の人物への変身、ファンタジー世界の住人、実在の音楽家や政治家の再現まで、作品ごとに異なる課題があります。

以下は、対象映画の公開年を基準に整理した受賞作と受賞者の一覧です。映画の公開年と授賞式の開催年は通常1年ずれるため、2025年公開の『フランケンシュタイン』は2026年の第98回アカデミー賞で受賞しています。1983年公開作品については、この部門の受賞記録がありません。

対象映画の公開年 受賞作 主な受賞者
1981年狼男アメリカン(An American Werewolf in London)リック・ベイカー
1982年人類創世(Quest for Fire)サラ・モンザーニ、ミシェル・バーク
1984年アマデウスポール・ルブラン、ディック・スミス
1985年マスクマイケル・ウェストモア、ゾルタン・エレク
1986年ザ・フライクリス・ウェイラス、ステファン・デュプイ
1987年ハリーとヘンダスン一家リック・ベイカー
1988年ビートルジュースヴェ・ニール、スティーブ・ラ・ポート、ロバート・ショート
1989年ドライビング Miss デイジーマンリオ・ロッケッティ、リン・バーバー、ケビン・ヘイニー
1990年ディック・トレイシージョン・カリオーネ・ジュニア、ダグ・ドレクスラー
1991年ターミネーター2スタン・ウィンストン、ジェフ・ドーン
1992年ドラキュラグレッグ・キャノム、ミシェル・バーク、マシュー・W・マングル
1993年ミセス・ダウトグレッグ・キャノム、ヴェ・ニール、ヨランダ・トゥシエン
1994年エド・ウッドリック・ベイカー、ヴェ・ニール、ヨランダ・トゥシエン
1995年ブレイブハートピーター・フランプトン、ポール・パティソン、ロイス・バーウェル
1996年ナッティ・プロフェッサー/クランプ教授の場合リック・ベイカー、デビッド・ルロイ・アンダーソン
1997年メン・イン・ブラックリック・ベイカー、デビッド・ルロイ・アンダーソン
1998年エリザベスジェニー・シャーコア
1999年トプシー・ターヴィークリスティン・ブランデル、トレフォー・プラウド
2000年グリンチリック・ベイカー、ゲイル・ライアン
2001年ロード・オブ・ザ・リングピーター・オーウェン、リチャード・テイラー
2002年フリーダジョン・ジャクソン、ベアトリス・デ・アルバ
2003年ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還リチャード・テイラー、ピーター・キング
2004年レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語ヴァリ・オライリー、ビル・コルソ
2005年ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女ハワード・バーガー、タミ・レーン
2006年パンズ・ラビリンスダビ・マルティ、モンセ・リベ
2007年エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜(La Vie en Rose)ディディエ・ラヴェルニュ、ジャン・アーチバルド
2008年ベンジャミン・バトン 数奇な人生グレッグ・キャノム
2009年スター・トレックバーニー・バーマン、ミンディ・ホール、ジョエル・ハーロウ
2010年ウルフマンリック・ベイカー、デイブ・エルシー
2011年マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙マーク・クーリエ、J・ロイ・ヘランド
2012年レ・ミゼラブルリサ・ウェストコット、ジュリー・ダートネル
2013年ダラス・バイヤーズクラブアドルイサ・リー、ロビン・マシューズ
2014年グランド・ブダペスト・ホテルフランシス・ハノン、マーク・クーリエ
2015年マッドマックス 怒りのデス・ロードレスリー・ヴァンダーウォルト、エルカ・ワーデガ、ダミアン・マーティン
2016年スーサイド・スクワッドアレッサンドロ・ベルタラッツィ、ジョルジョ・グレゴリーニ、クリストファー・ネルソン
2017年ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男辻一弘、デビッド・マリノフスキー、ルーシー・シビック
2018年バイスグレッグ・キャノム、ケイト・ビスコ、パトリシア・デヘイニー
2019年スキャンダル辻一弘、アン・モーガン、ビビアン・ベイカー
2020年マ・レイニーのブラックボトムセルヒオ・ロペス=リベラ、ミア・ニール、ジャミカ・ウィルソン
2021年タミー・フェイの瞳リンダ・ダウズ、ステファニー・イングラム、ジャスティン・ローリー
2022年ザ・ホエールエイドリアン・モロ、ジュディ・チン、アン・マリー・ブラッドリー
2023年哀れなるものたちナディア・ステイシー、マーク・クーリエ、ジョシュ・ウェストン
2024年サブスタンスピエール=オリヴィエ・ペルサン、ステファニー・ギヨン、マリリン・スカルセリ
2025年フランケンシュタインマイク・ヒル、ジョーダン・サミュエル、クレオナ・フューレイ

上の一覧から見えるのは、受賞作が必ずしも大作やファンタジー映画に限られないことです。『ドライビング Miss デイジー』のような人物描写を重視した作品から、『ターミネーター2』や『メン・イン・ブラック』のようなSF作品、さらに『ダラス・バイヤーズクラブ』や『バイス』のような実在人物の変身を伴う作品まで、異なるタイプの仕事が評価されています。

また、歴代受賞者にはリック・ベイカーやグレッグ・キャノム、マーク・クーリエ、辻一弘など、複数の受賞作に関わってきた専門家がいます。受賞者の名前を追うことは、ハリウッドにおける特殊メイクの技術史を読み解く手掛かりにもなります。

【審査基準を解説】ノミネートから受賞決定までの仕組み

アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞は、一般の映画ファンによる人気投票ではありません。米映画芸術科学アカデミーが定める規則に基づき、専門部門の審査を経てノミネート作品が決まり、その後、アカデミー会員による最終投票で受賞作が選ばれます。

第98回アカデミー賞の規則では、メイクアップ・ヘアスタイリング部門の専門家が候補作品を検討し、最初の選考で最大10作品をショートリストに選びます。その後、候補作の具体的な技術を紹介する映像や説明を通じて審査が行われ、5作品が最終ノミネートに進みました。

選考の流れを整理すると、次のようになります。

  • 第1段階:資格を満たす作品を対象に、メイクアップ・ヘアスタイリング部門の専門家が審査候補を選定する。
  • 第2段階:最大10作品がショートリストに進み、候補作品の技術を示す資料や映像が用意される。
  • 第3段階:専門部門の会員が作品ごとの技術的な成果を確認し、秘密投票で最終ノミネート5作品を決める。
  • 第4段階:最終投票で受賞作が決定する。この段階の投票資格は、専門部門だけでなく、アカデミーの現役会員および終身会員に広がる。

特に注目したいのが、最終候補作の技術を紹介する「ベイクオフ」と呼ばれる事前審査イベントです。これは、ショートリストに進んだ作品の担当者が、選考対象となる技術を示す場です。規則では、最終的な劇場公開版から選んだ場面を使い、メイクアップやヘアスタイリングの具体的な成果を審査員に伝えることが求められています。

つまり、受賞作を決める際に重要なのは、完成した映像を見て「すごい」と感じることだけではありません。どのような素材や技法で外見を作ったのか、撮影現場で実現できたことは何か、役柄の変化をどのように視覚化したのかといった、実際の制作技術も審査の対象になります。

一方、公式規則には、各作品の得票数や個々の審査員がどの点を評価したかという詳細までは示されていません。そのため、受賞作と他のノミネート作品の差を、公式に公表された採点表や点数で説明することはできません。受賞結果を分析する場合は、公開されている技術資料と作品の表現を比較する必要があります。

【徹底比較】『フランケンシュタイン』と『国宝』は何が違ったのか

2026年の結果を理解するには、受賞した『フランケンシュタイン』とノミネートされた『国宝』が、それぞれどのような課題に取り組んだ作品なのかを比較すると分かりやすくなります。両作品は同じ部門に並びましたが、求められる技術や画面上の役割は大きく異なります。

『フランケンシュタイン』:架空の生命体を実在感のある人物として成立させる

ギレルモ・デル・トロ監督による『フランケンシュタイン』では、ジェイコブ・エロルディが怪物であるクリーチャーを演じています。メイクアップとプロステティクスを担当したマイク・ヒルは、俳優の身体を大きく変える造形を手掛け、顔や頭部、身体に複数の人工装具を組み合わせることで、架空の存在に具体的な肉体を与えました。

Netflixの制作紹介記事によると、エロルディのクリーチャー役には42個のプロステティクスが使用されました。全身のメイクアップには、作業内容によって長時間の準備が必要となり、顔だけを整える一般的なメイクとは異なる精密さが求められました。

この作品の造形は、単純に恐ろしい怪物を作ることだけを目的としていません。デル・トロ監督が目指したのは、美しさと不気味さを併せ持ち、観客が感情移入できる存在です。皮膚の色調や身体の構造、傷の配置、頭部の形状などを通じて、クリーチャーがどのように作られたのか、どのような存在なのかを視覚的に伝えています。

『フランケンシュタイン』の強みは、メイクアップが単なる外見の装飾にとどまらず、キャラクターの設定や物語の解釈に直結している点です。俳優の身体を別の存在へと変えながら、その人物の感情を観客に伝える。その両立が、この作品の技術的な見どころになっています。

『国宝』:歌舞伎の化粧とかつらを通して人物と時代を表現する

李相日監督の『国宝』は、歌舞伎の世界に生きる人々の人生と芸の継承を描いた作品です。豊川京子、日比野直美、西松辰一の3人が担当したメイクアップとヘアスタイリングは、歌舞伎特有の化粧、かつら、役柄に応じた外見を映画の画面に再現する仕事でした。

歌舞伎の化粧やかつらは、単に俳優の顔を華やかに見せるためのものではありません。舞台上の人物像や役柄の印象を形成し、伝統芸能の様式を支える要素です。映画では、舞台上の表情を正面から見せるだけでなく、俳優の動きや顔の細かな変化をカメラが捉えます。そのため、舞台芸術としての様式を守りながら、映画の映像表現としても成立させる技術が大切です。

さらに『国宝』では、物語の時間の経過や登場人物の成長、芸の成熟を外見の変化からも伝える必要があります。化粧の仕上がりだけでなく、かつらの造形、役柄に合った見せ方、撮影場面を通じた一貫性など、複数の要素が組み合わさっています。

この点で、『国宝』は日本の伝統芸能を映画に移し替える際の高度な専門性を示した作品です。アカデミー賞の最終候補に選ばれたこと自体、歌舞伎の化粧やかつらを支える技術が、国際的な映画制作の技術として認識されたことを意味します。

では、『国宝』が受賞を逃した理由は何か。

公式には、投票の詳細や個々の作品に対する評価の内訳は公表されていません。そのため、「歌舞伎の化粧が海外の審査員に理解されなかった」「特殊メイクの規模で負けた」といった説明を、確定した敗因として扱うことはできません。

作品の技術的な特徴を比較すると、両作が目指した成果の違いは見えてきます。『フランケンシュタイン』は、俳優を架空の生命体へ変身させる立体造形と、キャラクターの存在感を支える特殊メイクが際立つ作品です。一方、『国宝』は、歌舞伎の伝統的な様式を維持しながら、人物の人生や芸の変化を映像に反映させる点に特徴があります。

この比較から導けるのは、どちらの技術が優れているかという単純な優劣ではありません。同じ部門で競われる作品でも、造形の大胆さ、文化的な様式の再現、人物の変化、画面上の説得力など、異なる方向から高度な技術が発揮されているということです。『国宝』の受賞が実現しなかったことと、作品の技術的な価値が低いことは、同じ意味ではありません。

【プロの結論】メイクアップ&ヘアスタイリング賞を読み解く3つの視点

アカデミー賞の結果をより深く理解するには、受賞したかどうかだけでなく、作品が何を実現しようとし、どの技術によってそれを可能にしたかを見ることが重要です。2026年の結果を踏まえると、特に次の3つの視点が役立ちます。

1.外見の変化が物語にどれだけ結び付いているか

優れたメイクアップは、俳優を別人に見せることだけで完成するわけではありません。年齢や傷、肌の質感、髪型などが、人物の人生や性格、置かれた状況を伝える役割を果たすと、外見そのものが物語の一部になります。『フランケンシュタイン』ではクリーチャーの身体が存在の背景を示し、『国宝』では歌舞伎の化粧とかつらが芸と人物の関係を支えています。

2.実際に施された技術と、映像全体の効果を分けて考える

映画の完成映像には、メイクアップだけでなく、照明、撮影、編集、視覚効果、衣装など多くの技術が関わっています。顔の造形が優れていても、映像全体の印象をそのままメイクアップだけの成果と考えるのは適切ではありません。アカデミー賞の部門規則を踏まえ、実際の人工装具や化粧、髪型の仕事がどのように画面に表れているかを見分けることが、正確な評価につながります。

3.文化的な再現と、造形上の革新を同じ物差しで単純比較しない

『国宝』のように伝統芸能を題材とする作品では、既存の様式や技術を理解し、映像の中で説得力を持たせることが大きな課題です。一方、『フランケンシュタイン』のようなファンタジー作品では、現実には存在しない身体を、観客が信じられる形で作り上げることが重要になります。両者は違う方向の専門性を必要とするため、受賞の有無だけで技術の価値を決めることはできません。

また、メイクアップ&ヘアスタイリング賞の受賞者一覧を追うと、技術の進化だけでなく、映画が外見を通じて何を表現してきたかも見えてきます。歴史上の人物への変身、SF作品の異星人、ファンタジーの住人、実在の人物の再現など、作品ごとの課題に応じて技術が発展してきました。

『国宝』のノミネートは、日本映画の伝統的な技術が国際的な評価の対象になったという意味で、受賞結果とは別の意義を持ちます。今後、同部門を観る際には、トロフィーを手にした作品だけでなく、最終候補に選ばれた作品がどのような技術的課題に挑み、どのような表現を実現したのかにも目を向けたいところです。

【アカデミーメイクアップ&ヘアスタイリング賞】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:2026年のアカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した映画は?
A1:『フランケンシュタイン』です。マイク・ヒル、ジョーダン・サミュエル、クレオナ・フューレイの3人が受賞しました。授賞式は2026年3月15日、米国現地時間に開催された第98回アカデミー賞です。

Q2:映画『国宝』はなぜ受賞できなかったのですか?
A2:投票の詳細や公式な敗因は公表されていません。『国宝』は歌舞伎の化粧やかつらを通じて伝統芸能と人物の変化を表現した作品であり、『フランケンシュタイン』は架空の生命体を立体造形や特殊メイクによって成立させた作品です。両作の技術的な特徴は異なりますが、受賞結果だけから技術の優劣や具体的な敗因を断定することはできません。

Q3:メイクアップ&ヘアスタイリング賞はどのような基準で審査されますか?
A3:アカデミーの規則では、俳優の顔や身体に直接施す化粧、人工装具、付けひげ、かつら、ヘアスタイリングなどによる外見の変化が対象です。専門部門による選考と最終ノミネートの決定を経て、アカデミー会員による最終投票で受賞作が決まります。個々の作品の得票数や詳細な採点結果は公表されていません。

Q4:メイクアップ賞はいつ新設されたのですか?
A4:競争部門としては1981年に設けられ、第54回アカデミー賞で初めてノミネート作品が選ばれました。最初の受賞作は『狼男アメリカン』で、リック・ベイカーが受賞しています。それ以前にも、1964年の『七つの顔の大悪魔』や1968年の『猿の惑星』が、メイクアップの功績に対する名誉賞を受けています。

Q5:日本人のメイクアップアーティストがアカデミー賞を受賞したことはありますか?
A5:あります。日本出身の辻一弘は、『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』と『スキャンダル』でメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞しています。2026年の『国宝』のノミネートは、日本人が初めて同部門に関わったという意味ではなく、日本映画の担当者がこの部門で初めてノミネートされたという点で歴史的な出来事でした。

2026年の第98回アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞は、『フランケンシュタイン』が受賞し、『国宝』は惜しくも受賞を逃しました。しかし、この結果を単純な勝敗だけで捉えると、両作品が実現した技術の価値を十分に理解できません。

『フランケンシュタイン』は、架空の生命体に説得力のある身体と表情を与え、物語の中心となるキャラクターを造形しました。『国宝』は、歌舞伎の化粧やかつらを通して、日本の伝統芸能と人物の歩みを映画の中で表現しました。どちらも、外見を作る仕事が作品の世界観や人物描写を支えていることを示しています。

歴代受賞作を振り返ると、この部門は特殊メイクの大胆さだけでなく、実在人物の再現、時代の表現、髪型や化粧による人物造形など、さまざまな専門技術を評価してきました。受賞者の名前や作品の歴史を知ることは、映画を別の角度から楽しむきっかけにもなります。

今後、アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞をチェックする際は、受賞作だけでなく、ノミネート作品の制作技術、俳優の変身を支えた工夫、文化的な様式の再現にも注目してみてください。『国宝』のノミネートが示したように、国際的な映画賞では、日本の伝統芸能を支えてきた技術も世界の映画制作を構成する重要な専門領域として評価され得るのです。

同じカテゴリの記事

土谷 亮平

プロ野球とサッカーを中心に、試合結果と選手コメントを公式記録で裏取り。数字は一次記録から拾うことを徹底しています。

おすすめの関連記事