2026年のカンテレ社長会見で焦点となったのは、フジテレビ事案の影響による業績悪化と、信頼回復に向けた経営改革の進捗です。関西テレビ放送(カンテレ)の岡宏幸社長は、2026年6月19日の夏季社長記者会見で、2025年度の厳しい経営環境を振り返るとともに、動画配信の売上過去最高、コンプライアンス強化、2026年度の成長戦略について説明しました。
関西テレビの公式決算資料によると、2026年3月期の放送収入は前年度比7.7%減、個社の営業損益は5,900万円の赤字でした。一方、動画配信や番組販売などのコンテンツ事業には成長の兆しが見られます。広告収入はどこまで回復したのか。2026年度の増収増益予算は実現可能なのか。岡社長の会見内容、社長交代の経緯、ガバナンス改革の実態を数字と公式発表を軸に整理します。
【2026年最新】カンテレ夏季社長会見で岡宏幸社長が語った内容

関西テレビ放送は2026年6月19日、大阪市北区の本社で夏季社長記者会見を開催しました。会見の概要は6月23日に同局の公式サイトで公表されています。登壇した岡宏幸社長は、2025年6月の社長就任から約1年を振り返り、フジテレビ事案による経営への影響と、社内のガバナンス・コンプライアンス改革について説明しました。
岡社長は、広告収入だけでなく、コンテンツ制作や主催イベントにも想定以上の影響が及んだと振り返りました。そのうえで、厳しい環境を会社の在り方を見直す機会として捉え、経営陣だけでなく社員やグループ関係者の間でも、コンプライアンスとガバナンスの重要性に対する認識が深まったとの考えを示しています。
会見で示された方向性は、単なる経費削減や広告営業の立て直しにとどまりません。放送事業を維持しながら、ドラマ、アニメ、動画配信、番組販売、イベントなどへ収益源を広げ、企業統治の仕組みも再構築するというものです。
2026年6月19日の株主総会と取締役会では、岡宏幸氏の代表取締役社長としての続投も正式に決まりました。信頼回復と事業構造の変革を同時に進める体制が継続することになります。
【2025年度決算】放送収入約8%減の理由とフジテレビ事案の影響
カンテレの2025年度決算を読み解くうえで重要なのは、放送収入の落ち込みと、それ以外の事業の動きを分けて見ることです。
2026年5月20日に公表された関西テレビの決算資料では、2026年3月期の個社売上高は513億1,400万円で、前年度の544億4,000万円から5.7%減少しました。放送事業収入は502億1,300万円となり、前年度比6.0%減。なかでも広告などを中心とする放送収入は392億9,100万円で、7.7%の減少となっています。
岡社長は6月の会見で、2025年度はフジテレビ事案の影響を受け、売上高が前年比で約6%減少したと説明しました。放送収入ではネットタイムとスポットの双方が落ち込んだとしています。
ネットタイム収入は、番組の提供スポンサーなどから得られる広告収入です。スポット収入は、番組提供とは別に、特定の時間帯などにCMを放送することで得られます。両方が減少したことは、影響が一部の広告枠だけにとどまらなかったことを示しています。
背景にあるのが、フジテレビをめぐる一連の問題です。系列局であるカンテレにも、スポンサー企業の広告出稿判断を通じて影響が波及しました。2025年5月の社長人事発表時には、2024年度の放送収入が前年度比で約3億円減少し、フジテレビの問題を理由に出稿に至らなかった企業が約20社あったとの説明も報じられています。
ただし、2025年度の減収をすべて同じ要因で説明するのは適切ではありません。カンテレの公式企業情報では、広告市場の伸び悩みやメディア環境の変化も厳しい経営環境の背景として挙げられています。系列局の問題による広告出稿への影響と、テレビ広告市場そのものの構造変化が重なった点が、今回の業績を理解するうえでのポイントです。
【決算データ比較】動画配信は過去最高でも赤字を補えなかった理由
決算の数字を詳しく見ると、カンテレの課題と成長分野が同時に浮かび上がります。放送収入が大きく落ち込んだ一方、コンテンツ事業収入は微増を維持し、その他の事業収入も増加しました。
以下は、関西テレビが2026年5月20日に公表した2026年3月期の決算資料を基に、前年度との比較を整理したものです。金額の単位は百万円です。
| 項目 | 2024年度 | 2025年度 | 前年度比 |
|---|---|---|---|
| 連結売上高 | 57,883 | 55,251 | 4.5%減 |
| 連結営業利益 | 2,285 | 345 | 84.9%減 |
| 個社売上高 | 54,440 | 51,314 | 5.7%減 |
| 個社営業損益 | 2,017 | △59 | 赤字転落 |
| 放送収入 | 42,555 | 39,291 | 7.7%減 |
| タイム収入 | 14,235 | 12,703 | 10.8%減 |
| スポット収入 | 28,320 | 26,587 | 6.1%減 |
| コンテンツ事業収入 | 10,878 | 10,922 | 0.4%増 |
| その他の事業収入 | 1,006 | 1,100 | 9.4%増 |
出典:関西テレビ放送「決算および役員人事内定についてのお知らせ」(2026年5月20日)。個社は関西テレビ単体、連結はグループ全体を指します。△はマイナスを表します。
注目すべきは、個社の営業損益が前年度の20億1,700万円の黒字から5,900万円の赤字に転じた一方、コンテンツ事業収入は109億2,200万円と、わずかながら前年度を上回ったことです。
岡社長が6月の会見で明らかにしたところでは、TVerなどの見逃し配信を含む動画配信の売上は過去最高を記録しました。他局への番組販売収入も2014年度以来の高水準となり、イベント事業ではゴッホ展が予算を大きく上回る実績を上げています。
つまり、コンテンツを生み出して外部へ展開する力は育っているものの、現状では放送収入の減少を埋め切れていません。成長分野があることと、会社全体の収益が回復することは別問題です。
加えて、グループ連結では売上高が552億5,100万円、営業利益が3億4,500万円でした。子会社のスポーツクラブ事業や通販・クリエイティブ事業などが寄与したものの、関西テレビ本体の業績悪化を十分に補うことはできませんでした。
動画配信の過去最高という実績は、明確な成長材料です。しかし、今後の経営を評価する際には、売上の記録更新だけでなく、配信・番組販売・イベントがどの程度の利益を生み、放送広告への依存度をどこまで引き下げられるかを見る必要があります。
【広告収入の回復】スポンサーは約90%戻ったのか?
カンテレの広告収入については、2026年1月23日の新春社長会見で岡社長が回復状況を説明しています。スポーツ紙などの報道によると、地元スポンサーを中心に広告収入は約90%まで戻ってきたとの認識を示しました。
ただし、この数字は広告収入全体が完全に回復したことを意味するものではありません。岡社長の説明では、地元スポンサーを中心としたローカルタイムの広告は戻りつつある一方、フジテレビ制作番組を放送するネットタイムでは、なお出稿を控える企業が残っていました。
とりわけ、首都圏で放送される部分について、フジテレビへの広告出稿を避ける判断がカンテレのネットタイム収入にも影響しているとの見方が示されています。地域向け広告の回復が進んでも、系列ネットワークを通じた広告取引が同じ速度で回復するとは限らない構造です。
また、約90%という数字は2026年1月時点の説明です。6月の夏季社長会見と2026年3月期決算では、年間の放送収入が前年度比7.7%減少したことが明らかになっていますが、広告収入の回復率について新たな具体的な割合は示されていません。
したがって、広告回復の現状を判断するには、少なくとも次の3点を区別が必要です。
- ローカル広告:地元スポンサーを中心に回復が報告されている分野。
- ネットタイム広告:系列局を通じた放送枠の事情が影響し、回復に差が残る分野。
- 年度決算:実際に計上された放送収入を通じて、回復が業績に反映されたかを確認する指標。
広告主の出稿再開は信頼回復を測る一つの材料ですが、経営の正常化を示すには、出稿の継続性と収益への反映も確認しなければなりません。2026年度の業績が改善するかどうかは、今後の決算で検証されることになります。
【社長交代の経緯】岡宏幸社長の就任と歴代体制の変化
カンテレの経営改革を理解するうえでは、岡宏幸社長への交代に至った経緯も押さえておきたいところです。
大多亮氏は2024年6月に関西テレビの社長に就任しました。しかし、フジテレビをめぐる一連の問題を受け、2025年4月4日付で社長職を辞任。その後は福井澄郎会長が株主総会まで社長を兼務する体制となりました。
2025年5月19日、関西テレビは岡宏幸氏の社長昇任と、尾谷牧夫氏の会長就任を発表しました。岡氏は同年6月19日の株主総会と取締役会を経て、代表取締役社長に正式就任しています。2026年6月19日には社長としての続投が決まりました。
岡社長は1991年に関西テレビへ入社し、営業局業務部や編成局編成部、編成局長などを経て、2023年に取締役に就任した経歴を持ちます。営業や編成を経験してきた人物がトップに就いたことで、広告収入の回復と番組・コンテンツの事業展開を両立させる経営手腕が問われています。
今回の人事は、社長の交代だけではありません。2026年6月の役員体制では、産業経済新聞社の代表取締役社長を務める近藤哲司氏が新たな社外取締役に就任しました。監査役の交代も行われ、経営監督と事業構造の変革を支える体制が整えられています。
もっとも、役員人事の刷新だけで企業文化が変わったと判断することはできません。重要なのは、現場から問題が報告される仕組みが機能するか、経営側が不都合な情報にも対応できるか、そして再発防止策が日々の業務に定着するかという点です。
【コンプライアンス強化の実態】ガバナンス改革はどこまで進んだか
2026年6月の会見で岡社長が説明した改革は、社内ルールの整備だけにとどまりません。内部統制の体制を再構築し、現場の各部署が把握したリスク情報を全社で集約・共有し、経営判断につなげる仕組みを見直したとしています。
具体的な取り組みとして挙げられたのは、リスクマネジメントに関する会議や規程類の見直し、既存の通報窓口の充実、ハラスメント対応の仕組みの整備です。社員やスタッフが安心して働ける環境をつくり、整備した体制をグループ全体に浸透させることが掲げられました。
また、2026年2月には「カンテレグループ サステナビリティ方針」を制定。信頼性の高い情報発信と良質なコンテンツ・サービスを通じて社会的役割を果たすことを基本姿勢に据えています。企業統治、人権尊重、コンプライアンスの徹底を、事業運営の前提として位置づけた形です。
では、改革の成果は何によって判断できるのでしょうか。公表された取り組みを踏まえると、少なくとも以下の観点が重要です。
- 問題の早期発見:現場からのリスク情報が、組織内で滞留せず経営陣まで届くか。
- 通報者の保護と対応:通報窓口が実際に利用でき、ハラスメントの申し立てなどに適切な対応が行われるか。
- 経営の監督機能:取締役会や監査役が経営判断を適切に監督できるか。
- 継続的な検証:規程を整えるだけでなく、実際の運用や再発防止の成果を検証しているか。
このうち、内部統制の再構築や通報窓口の充実などは、会社が公表した実施事項です。一方、それらの仕組みがどれほど機能しているかを判断するには、今後の運用状況や説明の継続性が欠かせません。制度を設けたことと、組織に定着したことは区別して評価する必要があります。
報道機関であるカンテレにとって、信頼回復は広告主との取引だけの問題ではありません。視聴者に対する情報発信の責任、取材現場の判断、制作スタッフの労働環境にも関わります。経営の透明性と現場の安心を両立できるかが、改革の実効性を測る基準になります。
【2026年度の成長戦略】Re:STARTカンテレと増収増益予算の焦点
2026年度のカンテレが掲げる経営目標は、個社・グループ連結ともに増収増益です。岡社長は6月の会見で、地上波放送事業のポジションアップに加え、ドラマの強化、アニメへの積極投資、これまで取り組んでこなかった事業分野への挑戦を進める考えを示しました。
この方針を具体化するのが、2026年度から2028年度までの中期経営計画「Re:START カンテレ!」です。「カンテレグループ 第二の創業」を掲げ、テレビ局という枠を超えた事業構造への転換を目指しています。
計画の柱は、大きく3つに整理できます。
- コンテンツ戦略:関西地域に根ざした番組づくりを続けながら、ドラマやバラエティなどのコンテンツを全国、さらに海外へ展開する。
- ビジネス戦略:地上波広告への過度な依存から脱却し、動画配信、番組販売、イベント、IPビジネスなど収益源を多様化する。
- 経営基盤の強化:グループ再編や業務改革を進め、成長分野へ経営資源を振り向ける。
コンテンツ展開の具体例として、岡社長はドラマブランドの強化やアニメ事業への投資を挙げました。2026年6月の会見では、ドラマ「GTO」の展開や、テレビ西日本と連携する全国ネットの連続ドラマ枠なども紹介されています。制作と営業を系列局間で協力することにより、コンテンツの価値を高め、販売機会を広げる狙いです。
バラエティでは「千原ジュニアの座王」のフォーマット契約を通じ、23の国と地域でローカル版の制作・配信に向けた展開を進める計画も示されました。番組を国内で放送して終わらせず、海外向けのライセンス展開やライブイベントへと広げる取り組みです。
こうした事業展開は、動画配信の売上過去最高や番組販売収入の伸長とも方向性が一致しています。番組を制作する能力を、放送枠の広告収入だけでなく、配信、販売、イベント、海外展開へと結びつけることができれば、収益構造の改善につながる可能性があります。
一方、2026年度の増収増益予算は、あくまで今後の達成を目指す計画です。2025年度にはコンテンツ事業が堅調でも、放送収入の減少を埋められませんでした。新規投資が売上や利益に結びつくまでには時間がかかる場合もあり、予算を発表したことだけで再建の成功が確定するわけではありません。
今後は、コンテンツ事業の成長率に加え、営業利益の回復、広告収入の推移、配信や海外販売が生み出す利益を継続的に確認する必要があります。ガバナンス改革と収益構造の転換が並行して進むかどうかが、2026~2028年度の中期経営計画を評価するうえでの焦点です。
【カンテレ社長会見】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年のカンテレ社長会見はいつ開催されましたか?
A1:夏季社長記者会見は2026年6月19日に開催され、関西テレビは6月23日に公式概要を公表しました。岡宏幸社長が2025年度の業績、コンプライアンス強化、2026年度予算、中期経営計画などについて説明しています。
Q2:カンテレの放送収入は2025年度にどれだけ減少しましたか?
A2:2026年5月20日公表の決算資料によると、2026年3月期の放送収入は392億9,100万円で、前年度比7.7%減でした。タイム収入は10.8%減、スポット収入は6.1%減となっています。
Q3:カンテレの広告収入は回復していますか?
A3:2026年1月の新春会見では、地元スポンサーを中心に約90%まで戻ったとの説明が報じられました。ただし、ネットタイムでは出稿を控える企業が残っていました。6月の会見では広告収入の新たな回復率は公表されていないため、年間決算や今後の公式発表を併せて確認することが大切です。
Q4:岡宏幸社長はいつ就任しましたか?
A4:岡宏幸氏は2025年6月19日に関西テレビの代表取締役社長に正式就任しました。前社長の大多亮氏が同年4月に辞任した後、福井澄郎会長が一時的に社長を兼務し、岡氏への交代が決まりました。岡氏は2026年6月にも続投しています。
Q5:「Re:START カンテレ!」とは何ですか?
A5:2026年度から2028年度までの3年間を対象とする中期経営計画です。コンテンツの全国・海外展開、地上波放送への過度な依存からの脱却、グループ再編や業務改革を通じた経営基盤の強化を柱としています。
2026年のカンテレ社長会見から見えてくるのは、フジテレビ事案による広告収入への打撃と、放送依存から脱却するための事業改革が同時に進んでいるという現実です。2025年度の放送収入は前年比7.7%減となり、個社の営業損益は赤字に転じました。一方、動画配信の売上は過去最高を記録し、コンテンツ事業には成長の兆しが表れています。
経営再建を判断する際に注目したいのは、次の3点です。第一に、スポンサーの出稿回復が一時的なものではなく、安定した広告収入につながるか。第二に、動画配信、番組販売、イベント、海外展開などが売上だけでなく利益の拡大にも貢献するか。第三に、コンプライアンスやガバナンスの仕組みが実際に機能し、社員や取引先、視聴者からの信頼回復につながるかです。
2026年度の増収増益予算と「Re:START カンテレ!」は、再建に向けた方向性を示すものです。その成果を確かめるには、計画の発表だけでなく、次の決算で利益がどこまで戻るか、放送以外の事業がどれだけ成長するか、改革の運用状況が継続的に説明されるかを見ていく必要があります。
カンテレの今後を読み解くうえでは、広告収入の回復だけを追うのではなく、コンテンツを生み出す力、収益源の多様化、そして企業としての信頼性を一体で評価が必要です。2026年から2028年までの中期経営計画が、厳しい決算を持続的な成長へ転換する契機となるか。その実績が、経営再建の成否を左右することになります。