インターネット上の誹謗中傷は、単なる悪口では済まされないことがある。SNSでの執拗な攻撃、事実と異なる情報の拡散、匿名アカウントからの人格否定などが重なり、被害者が深刻な精神的苦痛を抱えるケースが問題になっている。ネット上のトラブルと自殺の関係を考えるうえで、見過ごせないのが警察庁の公表した統計だ。
2025年5月15日の衆議院政治改革に関する特別委員会で、警察庁は、SNSやインターネット上のトラブルが自殺の原因・動機の一つとなった人が、2022~2024年の3年間で101人だったと説明した。ただし、誹謗中傷だけを原因とする自殺者数は把握されていない。101人全員を誹謗中傷による自殺者とみなすことはできず、統計の意味を正確に理解する必要がある。
【警察庁の101人統計】誹謗中傷と自殺の関係を検証

誹謗中傷と自殺の関係を考える際、最初に確認したいのは、警察庁が公表した101人という数字が何を示しているのかという点だ。
福祉新聞Webなどの報道によると、警察庁は2025年5月15日の衆議院政治改革に関する特別委員会で、2022年から2024年までの3年間に、SNSやインターネット上のトラブルが自殺の原因・動機の一つとなった人が101人いたと明らかにした。警察庁の政府参考人も、同委員会で誹謗中傷に限った人数は把握していないと答弁している。
したがって、101人は「誹謗中傷による自殺者数」そのものではなく、ネットトラブルが自殺の原因・動機の一つとして確認された人の合計だ。対象には、誹謗中傷以外のインターネット上の問題も含まれ得る。
この区別は、統計を正しく読むうえで欠かせない。誹謗中傷が関係したケースが含まれていることは示されているものの、内訳が公表されていない以上、誹謗中傷だけの人数や割合を算出することはできない。
| 項目 | 確認できる内容 | 統計上の注意点 |
|---|---|---|
| 対象期間 | 2022~2024年 | 3年間の合計 |
| 対象人数 | 101人 | ネットトラブルが自殺の原因・動機の一つとなった人 |
| 公表の場 | 2025年5月15日の衆議院政治改革に関する特別委員会 | 警察庁の政府参考人が答弁 |
| 誹謗中傷に限定した人数 | 未把握 | 101人全員を誹謗中傷による自殺者と解釈することはできない |
| 年別の人数 | 3年間の合計101人が公表された | この公表内容だけでは各年の内訳を確定できない |
出典:衆議院政治改革に関する特別委員会の会議録、福祉新聞Webの2025年5月27日付報道。
101人という数字から分かること、分からないことこの統計から分かるのは、ネット上のトラブルが自殺の背景の一つとして認識され、警察庁が集計する対象になっているということだ。一方で、誹謗中傷だけによる自殺者数、投稿の種類別の人数、SNSごとの内訳、被害が始まってから亡くなるまでの期間などは、この数字だけでは分からない。
また、自殺は通常、複数の心理的・社会的要因が重なり合う複雑な問題である。ネット上の攻撃が関係したとしても、それだけで個々の事案のすべての原因を説明できるわけではない。反対に、複合的な背景があることを理由に、誹謗中傷の影響を軽視するのも適切ではない。
今後、誹謗中傷による被害の実態をより正確に把握するには、ネットトラブル全体の統計に加え、被害の種類、継続期間、被害者の置かれた状況などを整理できる調査が求められる。
【SNS誹謗中傷の実態】なぜ人は深刻な精神的被害を受けるのか
誹謗中傷とは、根拠のない悪口や中傷を広め、人を傷つけたり、社会的評価を低下させたりする行為を指す。正当な批判や意見表明とは異なり、人格を否定する言葉、虚偽の情報、執拗な攻撃などが問題になる。
インターネット上の誹謗中傷が深刻化しやすい背景には、対面でのやり取りとは異なるSNS特有の構造がある。
1.匿名性によって攻撃への心理的な歯止めが弱まる匿名アカウントや、現実の人間関係から切り離されたアカウントでは、投稿者が相手の反応を直接目にしないまま、強い言葉を使うことがある。画面の向こうに生活や感情を持つ人がいるという実感が薄れ、普段なら口にしないような表現が投稿される場合もある。
ただし、匿名であること自体が誹謗中傷を意味するわけではない。問題なのは、匿名性を利用して他人の権利を侵害する行為だ。
2.一つの投稿が転載・引用され、攻撃が連鎖するSNSでは、最初の投稿が引用、スクリーンショット、転載などによって別の場所へ広がることがある。元の投稿が削除されても、複製された画像や第三者によるまとめ記事が残る場合があり、被害者がすべての情報を把握することは難しい。
また、批判的な投稿が拡散されると、その内容を十分に確認しないまま別の利用者が攻撃に加わることもある。個々の投稿者が短い言葉を一度書いただけだと思っていても、多数の投稿が重なれば、受け手には継続的な攻撃として作用し得る。
3.人格否定や私生活への侵入が続く仕事や作品、発言に対する具体的な批判と、容姿、人格、家族、私生活などを攻撃する行為は区別しなければならない。事実に基づく批判であっても、その必要性や表現方法によっては別の問題が生じる。虚偽の情報を事実のように広めたり、侮辱的な言葉を繰り返したりする行為は、被害者に強い負担を与えることがある。
加えて、ネット上の情報は検索や転載を通じて長期間残る可能性がある。被害者が日常生活に戻ろうとしても、過去の投稿が再び拡散される不安を抱えることがある点も、SNS被害の特徴だ。
4.相談できず、孤立が深まる被害者が「自分にも原因があるのではないか」「周囲に知られたくない」と考え、家族や友人、職場、学校に相談できないこともある。誹謗中傷の内容が広く知られることへの恐れや、相談後の二次被害への不安が、支援を求める行動を妨げる場合もある。
自殺に至る背景は人によって異なり、SNSで攻撃された人が必ず自殺を考えるわけではない。それでも、被害が長引き、睡眠や食事、仕事、学業、人間関係に影響が出ている場合には、単なるネット上の口論として扱わず、早期に支援につなげることが重要だ。
【木村花さんの誹謗中傷事件】社会と法律を変えた経緯
ネット上の誹謗中傷が社会問題として広く認識される契機の一つとなったのが、女子プロレスラーの木村花さんをめぐる事件だ。
木村花さんは、フジテレビの恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演していた。2020年5月、22歳で亡くなった。亡くなる前にSNS上で誹謗中傷を受けていたことが報じられ、匿名の投稿者をどう特定するか、悪質な投稿にどのような法的責任を問えるのか、プラットフォームはどこまで対応すべきかという問題が改めて注目された。
ただし、個人の死の原因をSNS上の投稿だけに単純化することはできない。事件を通じて検討すべきなのは、誹謗中傷が被害者に与える影響と、被害を防止・救済する制度のあり方だ。
事件をめぐる主な動き- 2020年5月:木村花さんが亡くなり、SNS上の誹謗中傷が大きな社会問題となった。
- 2020年以降:木村さんの母、木村響子さんらが、ネット上の誹謗中傷への対応や法整備の必要性を訴えた。
- 2021年5月:東京地裁は、木村さんの死後に母親を中傷する投稿をした男性に対し、計129万2000円の支払いを命じた。報道によると、この金額には慰謝料50万円と発信者情報開示にかかった費用などが含まれていた。
- 2022年7月:侮辱罪の法定刑が引き上げられた。
- 2022年10月:発信者情報開示命令に関する裁判手続きが施行され、従来より簡易・迅速な特定を目指す制度が整備された。
- 2025年4月:情報流通プラットフォーム対処法が施行され、大規模プラットフォームの対応迅速化と運用の透明化を図る制度が始まった。
2021年の民事判決は、木村さん本人に対する投稿の損害賠償を直接認定した判決ではなく、亡くなった後に母親へ向けられた中傷をめぐるものだ。この点を混同しないことが重要である。
また、侮辱罪の厳罰化や発信者情報開示制度の見直しは、木村さんの事件を含む社会的な問題意識を背景に進められた。ただし、これらの制度改正を一つの事件だけの結果として説明するのは正確ではない。ネット上の権利侵害に対応するための法制度全体の変化として理解する必要がある。
【侮辱罪・名誉毀損罪】誹謗中傷に問われる法的責任
ネット上の投稿が誹謗中傷に当たる場合、内容や状況に応じて刑事責任や民事上の損害賠償責任が生じる可能性がある。すべての不快な投稿が犯罪になるわけではないが、匿名アカウントからの投稿であっても、法律上の責任を免れるとは限らない。
侮辱罪と名誉毀損罪の違い侮辱罪と名誉毀損罪は、いずれも刑法に定められた犯罪だが、基本的な成立要件が異なる。
- 侮辱罪:具体的な事実を示さず、公然と人を侮辱した場合に成立し得る。
- 名誉毀損罪:公然と事実を示し、人の社会的評価を低下させた場合に成立し得る。示した事実が真実かどうかだけで、犯罪の成否が決まるわけではない。
例えば、特定の人を公然と罵倒する投稿は侮辱罪が問題となり得る。一方、特定の人について犯罪行為や不正行為をしたと断定する投稿は、名誉毀損罪が問題となる可能性がある。ただし、実際の判断では投稿の文脈、対象者の特定可能性、公然性、表現の内容などが検討される。
法務省によると、侮辱罪の法定刑は2022年7月7日から引き上げられ、1年以下の懲役もしくは禁錮、30万円以下の罰金、拘留または科料となった。2025年6月1日の刑法改正による拘禁刑の導入後は、法定刑の表記も変更されている。2026年現在の侮辱罪の法定刑は、1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料である。
名誉毀損罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金だ。侮辱罪の厳罰化によって、侮辱に当たる行為の範囲そのものが一律に拡大したわけではない。犯罪が成立するかどうかは、個別の事案に即して判断される。
民事上の損害賠償責任刑事事件として処罰されるかどうかとは別に、投稿によって名誉やプライバシーなどの権利を侵害された場合、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求が認められる可能性がある。
請求できる損害には、事案に応じて慰謝料や、権利侵害への対応に必要となった費用の一部などが含まれ得る。ただし、弁護士費用や調査費用のすべてが当然に加害者へ請求できるわけではない。裁判所が認める金額は、請求内容や証拠、具体的な事情によって異なる。
批判と誹謗中傷はどう区別するか重要なのは、批判的な表現であることだけを理由に、違法な誹謗中傷と決めつけないことだ。政治家や企業、著名人の行為について、公共性のある問題を事実に基づいて批判することは、表現の自由として保護される場合がある。
一方で、虚偽の情報を広める行為、根拠のない犯罪者扱い、個人情報の暴露、人格を否定する執拗な投稿などは、表現の自由を理由に正当化できるとは限らない。投稿の目的だけでなく、内容、根拠、表現方法、拡散状況を総合的に検討する必要がある。
【発信者情報開示請求】IPアドレスから投稿者を特定する手順
匿名のSNSアカウントから誹謗中傷を受けた場合でも、一定の要件を満たせば、発信者情報開示請求によって投稿者の特定を目指せる。現在の制度では、従来型の手続きに加え、裁判所の発信者情報開示命令を利用する方法もある。
ステップ1:投稿の証拠を保存する最初に行いたいのは、問題となる投稿の証拠を確保することだ。削除やアカウントの変更によって、後から内容を確認できなくなる可能性がある。
- 投稿本文、画像、動画、返信、引用などをスクリーンショットで保存する。
- 投稿日時、投稿者のアカウント名、投稿ページのURL、サイト名を記録する。
- 投稿が掲載された前後の文脈も保存する。
- 転載や再投稿によって被害が広がっている場合は、確認できる範囲で記録する。
- 削除依頼や運営会社への申告を行った場合は、その受付番号や回答も保管する。
警察庁も、誹謗中傷の被害を受けた際には、サイト名、投稿者、投稿日時、内容などを記録するよう案内している。証拠を保存することは、削除依頼、警察への相談、弁護士への依頼、裁判手続きのいずれにも役立つ。
ステップ2:SNS運営会社などに開示を求める発信者情報開示請求では、まずSNS運営会社や掲示板管理者などのコンテンツプロバイダに対し、投稿者に関する情報の開示を求める。対象となる情報には、投稿時のIPアドレスやタイムスタンプなどが含まれる場合がある。
ただし、開示請求をすれば必ず情報が得られるわけではない。権利侵害が明らかであることなど、法律で定められた要件を満たす必要がある。任意の開示に応じてもらえない場合は、裁判所の手続きが必要になることもある。
ステップ3:IPアドレスから通信事業者を特定するIPアドレスは、通信に利用されたネットワーク上の識別情報だ。IPアドレスが分かれば、通信記録などを手掛かりに、接続に使われたインターネットサービスプロバイダなどを特定できる場合がある。
ただし、IPアドレスだけで投稿者本人の氏名や住所が直接判明するわけではない。共有回線、携帯電話回線、VPNなどが使われている場合もあり、IPアドレスから直ちに実際の投稿者を断定することはできない。
ステップ4:通信事業者に契約者情報の開示を求める続いて、通信事業者が保有する記録を基に、投稿時の通信に対応する契約者の氏名や住所などの開示を求める。従来は、SNS運営会社への手続きと通信事業者への手続きが別々に必要になることが多く、時間と費用が課題だった。
2022年10月に施行された発信者情報開示命令の制度では、提供命令や消去禁止命令などを組み合わせることで、複数の関係事業者にまたがる情報開示を一つの裁判手続きの中で進められる仕組みが整備された。ただし、事案によっては追加の手続きが必要で、必ず短期間で特定できるわけではない。
自死遺族支援弁護団も、発信者情報の開示、投稿者の特定、損害賠償請求という流れを解説している。通信記録が消去されると特定が難しくなる可能性があるため、被害に気付いたら、早い段階で弁護士や専門の相談機関に相談することが望ましい。
情報流通プラットフォーム対処法で何が変わったのか2025年4月1日、従来のプロバイダ責任制限法を改正した情報流通プラットフォーム対処法が施行された。この法律では、大規模プラットフォーム事業者に対し、権利侵害情報への対応手続きの迅速化や、削除対応の運用状況の透明化などを求めている。
この制度は、削除申出に対する対応を改善し、利用者が被害救済を求めやすくするためのものだ。ただし、すべての投稿が申出と同時に削除されるわけではなく、申出をすれば発信者の個人情報が自動的に開示される制度でもない。削除と投稿者特定は、それぞれ別の目的と要件を持つ手続きである。
【慰謝料・弁護士費用】誹謗中傷の被害を法的に解決するには
誹謗中傷に対する法的対応を検討するとき、多くの人が気にするのが、慰謝料はいくら請求できるのか、投稿者を特定するためにどれくらいの費用がかかるのかという点だ。
実際の金額は一律ではない。投稿の内容、回数、拡散の規模、被害者の社会的立場、仕事や生活への影響、権利侵害の程度などによって、認められる損害賠償額は変わる。
慰謝料に全国一律の金額はない法律事務所が公開している実務解説では、個人への誹謗中傷に対する慰謝料について、数十万円程度から、内容や被害の程度によっては100万円以上となるケースまで、幅のある目安が紹介されている。ただし、こうした金額はすべての事件に当てはまる基準ではなく、裁判で認められる金額を保証するものでもない。
木村花さんの死後に母親を中傷した投稿をめぐる2021年の東京地裁判決では、慰謝料50万円と発信者情報開示にかかった費用などを合わせ、129万2000円の支払いが命じられた。この判決は特定の事案についての判断であり、一般的な誹謗中傷事件の慰謝料相場をそのまま示すものではない。
発信者情報開示請求にかかる費用開示請求の費用は、裁判手続きの種類、投稿数、対象となるサービスの数、弁護士への依頼範囲などによって変わる。投稿の削除だけを求める場合と、投稿者の特定から損害賠償請求まで一貫して依頼する場合では、必要な費用が異なる。
弁護士事務所が公表する料金例には、発信者情報開示請求から損害賠償請求までの着手金として数十万円程度を見込むものもある。これに裁判所へ納める費用、通信事業者への照会に関連する費用、成功報酬などが加わる場合がある。
依頼する前に、次の点を確認しておきたい。
- 着手金と成功報酬の金額
- 投稿者の特定に失敗した場合の費用
- 削除請求と発信者情報開示請求が別料金かどうか
- 複数の投稿や複数のSNSが対象となる場合の追加料金
- 損害賠償請求まで依頼する場合の総額見込み
また、発信者を特定できたとしても、相手に十分な資力がなければ、判決で認められた金額を実際に回収できない場合がある。費用をかけて手続きを進めるかどうかは、被害の深刻さ、証拠の強さ、相手を特定できる見込み、回収可能性などを踏まえて検討することが大切だ。
【ネット誹謗中傷による自死】遺族支援と被害予防の具体策
誹謗中傷によって大切な人を亡くした遺族は、悲しみだけでなく、投稿者の特定、証拠の保全、法的手続き、ネット上に残る情報への対応など、複数の問題に直面することがある。
自死遺族支援弁護団は、インターネット上の誹謗中傷について、投稿者の特定や損害賠償などの法的対応に関する情報を提供している。遺族がすべてを自力で進める必要はなく、法的な支援と心理的な支援を並行して利用することが考えられる。
遺族が法的対応を検討する際の注意点遺族が投稿者の特定や損害賠償請求を検討する場合、まず関連する投稿や通信記録の保全が重要になる。時間の経過によって記録が失われる可能性があるため、弁護士に早期に相談することが有効だ。
また、遺族自身に対する誹謗中傷が発生する場合もある。被害を受けた遺族が、さらにネット上で攻撃されることを防ぐため、投稿の削除依頼、発信者情報開示請求、警察や人権相談窓口への相談など、状況に応じた対応を検討したい。
法的手続きを進めるかどうかは、遺族の意思や生活状況を踏まえて決めるべきことだ。手続きを進めないという選択も含め、遺族が自分たちの負担や希望に応じて支援を受けられる体制が求められる。
ネットいじめと自殺を防ぐためにできること学校や職場、家庭でネットいじめや誹謗中傷の兆候を見つけたときは、被害者を責めたり、安易に「気にしなければいい」と片付けたりしないことが重要だ。
- 被害者の話を聞く:投稿を見せることを無理に求めず、本人が話せる範囲で状況を確認する。
- 証拠を残す:投稿、日時、アカウント名、転載状況などを記録する。
- 被害を広げない:問題の投稿を面白半分に引用・転載せず、周囲にも拡散しないよう働きかける。
- 学校や職場と連携する:ネット上の問題が現実のいじめや嫌がらせにつながっている場合、適切な担当部署や相談窓口につなぐ。
- 専門家に相談する:削除や法的対応は専門窓口や弁護士に、心身の不調は医療機関や相談支援機関につなぐ。
周囲の人が被害者の変化に気付いたときは、本人の話を否定せず、落ち着いて聞くことが大切だ。睡眠や食事の変化、学校や仕事への行きづらさ、急な孤立などが続く場合には、本人の安全を確認し、必要に応じて家族や専門機関の支援を得たい。
SNS誹謗中傷の被害相談窓口誹謗中傷を受けた場合、相談先は目的によって異なる。削除方法を知りたいのか、投稿者を特定したいのか、刑事事件として相談したいのか、精神的な苦痛について支援を受けたいのかを整理すると、適切な窓口につながりやすい。
- 違法・有害情報相談センター(総務省):インターネット上の誹謗中傷やプライバシー侵害について、削除対応などの助言を受けられる。
- 法務省のインターネット人権相談受付窓口:ネット上の人権侵害に関する相談を受け付けている。
- 誹謗中傷ホットライン(セーファーインターネット協会):ネット上の誹謗中傷に関する情報を受け付け、事業者に利用規約に沿った削除などの対応を促す。個別の法律相談を行う窓口ではない。
- 警察:脅迫、つきまとい、個人情報の悪用など、犯罪に当たる可能性のある行為について相談できる。緊急の危険がある場合は110番を利用する。
- 自死遺族支援弁護団:ネット上の誹謗中傷を含む問題について、遺族の法的対応を検討する際の情報を得られる。
被害によって強い不安や絶望感が続いている場合は、法的対応だけでなく、心の支援につながることも大切だ。厚生労働省が案内する相談窓口には、次のようなものがある。
- #いのちSOS:0120-061-338。無料で、原則24時間365日相談を受け付けている。
- よりそいホットライン:0120-279-338。無料で、24時間対応。ガイダンスから専門的な相談を選べる。
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556。電話をかけた地域の公的な相談機関につながる。受付時間は地域によって異なる。
相談することは、被害を自分だけで解決しなければならないという負担を減らすための手段だ。自分や身近な人が差し迫った危険にさらされている場合は、一人で抱え込最初に、緊急の支援や医療機関につながってほしい。
【誹謗中傷自殺】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:誹謗中傷による自殺者は何人いますか?
A1:警察庁は、2022~2024年にSNSやインターネット上のトラブルが自殺の原因・動機の一つとなった人が計101人だったと公表しています。ただし、誹謗中傷だけに限定した人数は把握されていません。101人全員を誹謗中傷による自殺者と解釈することはできません。
Q2:SNSで悪口を書かれたら、必ず犯罪になりますか?
A2:必ず犯罪になるわけではありません。投稿の内容や文脈、公然性、事実の摘示の有無、権利侵害の程度などによって判断されます。侮辱罪や名誉毀損罪が成立する可能性があるほか、民事上の損害賠償責任が生じる場合もあります。
Q3:匿名アカウントの投稿者を特定できますか?
A3:法律上の要件を満たせば、発信者情報開示請求によって投稿者の特定を目指せます。投稿時のIPアドレスや通信記録などを手掛かりにしますが、必ず特定できるとは限りません。通信記録が消去される可能性もあるため、証拠を保存して早めに専門家へ相談が必要です。
Q4:誹謗中傷の慰謝料はいくら請求できますか?
A4:一律の金額はありません。投稿の悪質性、拡散状況、被害の程度などによって変わります。法律事務所が示す実務上の目安には数十万円程度から100万円以上まで幅があり、具体的な請求額や認められる金額は個別の事案によって異なります。
Q5:誹謗中傷を受けたら、最初に何をすべきですか?
A5:まず投稿の本文、日時、アカウント名、掲載ページなどの証拠を保存してください。そのうえで、プラットフォームへの削除依頼、総務省の違法・有害情報相談センターへの相談、弁護士への相談などを検討します。脅迫など差し迫った危険がある場合は、警察への相談を優先してください。
警察庁が公表した2022~2024年のネットトラブル関連の自殺者101人という数字は、SNSやインターネット上の問題が人命に関わる深刻な課題であることを示している。一方で、誹謗中傷だけによる自殺者数は未把握であり、統計が示す範囲を正確に理解する必要がある。
木村花さんの事件などを背景に、侮辱罪の厳罰化、発信者情報開示制度の整備、大規模プラットフォームの対応迅速化など、被害救済に向けた制度は変化してきた。しかし、法律が整備されたからといって、誹謗中傷の被害が自動的になくなるわけではない。
被害を受けた場合は、証拠の保存、削除依頼、発信者情報開示請求、損害賠償請求、専門窓口への相談という選択肢を把握しておくことが重要だ。すべてを一人で解決しようとせず、法的な支援と心理的な支援を必要に応じて組み合わせたい。
ネット上の批判と誹謗中傷を区別し、投稿の拡散に加担しないこと、被害を受けた人の声を軽視しないこと、早い段階で支援につなげること。その積み重ねが、誹謗中傷によって人が追い詰められる事態を防ぐための現実的な一歩となる。
参考にした主な公的資料・報道- 警察庁「インターネット上の誹謗中傷等への対応」
- 衆議院「政治改革に関する特別委員会」2025年5月15日会議録
- 法務省「侮辱罪の法定刑の引上げ Q&A」
- 情報流通プラットフォーム対処法関連情報サイト
- 自死遺族支援弁護団「インターネット上の誹謗中傷~加害者の特定と責任~」
- 厚生労働省「電話相談」「その他の相談先」
- 福祉新聞Web、テレビ朝日ニュースによる関連報道