自殺する人には、どのような心理や背景があるのでしょうか。2026年10月23日に閣議決定された厚生労働省の「令和8年版自殺対策白書」は、2025年の自殺者数が1万9,188人となり、統計開始以来初めて2万人を下回ったことを示しました。一方、小中高生の自殺者数は538人と、統計のある1980年以降で最多を更新しています。全体の数字が改善するなか、子どもや若者の深刻な状況が浮き彫りになりました。
自殺に至る背景は、特定の性格や一つの出来事だけでは説明できません。心身の不調、経済的な困窮、家庭や職場の問題、学校での悩み、孤独感などが重なり、本人が解決の道を見失ってしまうことがあります。最新の公的統計を基に、自殺する人の心理や特徴、気づきたい危険サイン、周囲ができる支援、相談窓口を整理します。もし今、自分や身近な人の命に危険が迫っている場合は、記事を読み進めるより先に、近くの人や救急などに助けを求めてください。
【2026年最新】自殺者数1万9,188人、子どもは過去最多538人

厚生労働省が公表した令和8年版自殺対策白書によると、2025年の国内の自殺者数は1万9,188人でした。前年の2万320人から1,132人減少し、警察庁の統計が始まった1978年以降で最も少ない数字となっています。
男女別では、男性が1万3,176人、女性が6,012人でした。男性は2年連続、女性は3年連続で減少しています。ただし、自殺者数の減少だけをもって、すべての年代や生活環境で問題が解消されたと判断することはできません。
特に深刻なのが、子ども・若者の状況です。小学生、中学生、高校生を合わせた自殺者数は538人となり、前年の529人から9人増加しました。1980年以降の統計で最多です。
令和8年版自殺対策白書の公表資料と、厚生労働省が警察庁の自殺統計原票データを基に作成した資料を比較すると、全体と子どもでは異なる傾向が見えてきます。
| 項目 | 2024年 | 2025年 | 前年差 |
|---|---|---|---|
| 自殺者総数 | 20,320人 | 19,188人 | 1,132人減 |
| 男性 | 13,801人 | 13,176人 | 625人減 |
| 女性 | 6,519人 | 6,012人 | 507人減 |
| 小中高生の合計 | 529人 | 538人 | 9人増 |
| 小学生 | 15人 | 10人 | 5人減 |
| 中学生 | 163人 | 172人 | 9人増 |
| 高校生 | 351人 | 356人 | 5人増 |
出典:厚生労働省「令和8年版自殺対策白書」、警察庁自殺統計原票データを基にした厚生労働省資料。2025年は確定値。
この比較で注目すべきなのは、社会全体の自殺者数が減少する一方、小中高生では過去最多となった点です。総数の改善だけでは見えにくい、年代ごとの課題が残されています。
なお、2026年10月時点で公表されている上記の年間確定値は2025年分です。「2026年最新」という表現は、2026年に公表された最新の年次統計を指しており、2026年の年間自殺者数を示すものではありません。
【心理と背景】自殺する人の特徴を一つの性格で決めつけられない理由
自殺する人の心理を理解するうえで、まず押さえたいのは「この性格だから自殺する」と一律に分類できるものではないということです。普段から明るい人、仕事をきちんとこなす人、周囲に気を配る人であっても、深刻な苦痛を抱えている可能性があります。
外からは順調に見えても、本人の内側では問題が積み重なっている場合があります。助けを求めることに抵抗を感じたり、家族や同僚に心配をかけたくないと思ったりして、つらさを隠してしまう人もいます。
自殺念慮とは、自分の命を絶ちたい、死にたい、あるいは消えてしまいたいと考えることです。具体的な行動を考えている場合だけでなく、「もう目覚めたくない」「自分がいなくなれば周囲に迷惑をかけずに済む」といった気持ちとして表れることもあります。
こうした考えが生まれる背景には、次のような心理が関係する場合があります。
- 強い絶望感:今の苦しみがいつまでも続き、状況が改善する可能性がないと感じる。
- 孤立感:周囲に人がいても、本当の気持ちを理解してもらえないと感じる。
- 自責感:問題のすべてを自分の責任だと思い込み、自分には価値がないと考えてしまう。
- 追い詰められた感覚:経済的な問題や人間関係などが重なり、ほかの選択肢を考えられなくなる。
- 助けを求めることへのためらい:弱い人だと思われることや、誰かに負担をかけることを恐れる。
これらは、すべての人に当てはまる特徴ではありません。また、どれか一つが見られたからといって、自殺の危険が必ず高いと断定できるわけでもありません。
重要なのは、性格診断のように相手を分類するのではなく、以前と比べて何が変わったのか、本人がどのような苦しさを抱えているのかに目を向けることです。
自殺を考えるほど追い詰められている人の気持ちは、必ずしも一方向に定まっているわけではありません。苦しみから逃れたい気持ちと、生き続けたい気持ちが揺れ動くこともあります。だからこそ、本人の言葉を軽く扱わず、苦痛を和らげる支援や別の解決策につなぐことが重要です。
【原因と動機】健康・経済・家庭・仕事の問題はどう重なるのか
自殺の原因と背景は、一つの出来事だけで説明できないことが少なくありません。病気や心身の不調に、仕事の負担や借金、家庭内の問題、孤立などが重なり、本人の対処できる範囲を超えてしまうことがあります。
厚生労働省の令和8年版自殺対策白書に掲載された2025年の原因・動機の集計では、「健康問題」が11,355件で最も多く、次いで「経済・生活問題」が5,387件、「家庭問題」が4,201件、「勤務問題」が2,390件でした。
ここでいう原因・動機の件数は、自殺者数そのものとは異なります。一人について複数の項目が計上される場合があるため、各項目の件数を単純に合計して自殺者数と比較することはできません。また、統計上の分類だけで個々の事情を完全に説明できるわけではありません。
健康問題には、身体の病気だけでなく、うつ病などの精神的な不調が関係する場合もあります。睡眠障害や強い不安、気分の落ち込みが続くと、日常生活を送るだけでも大きな負担になり、問題を解決するための気力を失ってしまうことがあります。
経済・生活問題では、収入の減少、失業、借金、生活費の不足などが精神的な負担につながることがあります。金銭的な問題は、住居や家族関係、健康状態にも影響するため、一つの困難が複数の問題へ広がる場合があります。
家庭問題や勤務問題も見過ごせません。家庭内の不和、介護負担、職場でのハラスメント、長時間労働、失業への不安などが、本人を孤立させる要因になることがあります。
また、学校での悩みについては、いじめだけに注目すればよいわけではありません。2025年の小中高生の状況では、学校問題が大きな要因として挙げられ、学業不振や進路の悩み、友人との不和なども課題となっています。健康問題や家庭問題も関係するため、学校だけ、家庭だけという単一の視点では十分に対応できません。
こうした背景を踏まえると、自殺予防には本人の心のケアだけでなく、生活費や住居、就労、医療、学校生活といった現実的な問題を一緒に解決していく視点が欠かせません。「気持ちの持ち方を変えれば済む」と考えるのではなく、苦しみを生み出している環境そのものに働きかける必要があります。
【見逃したくない】自殺の前兆と危険サイン、気づいたときの見方
自殺の前兆とされるサインには、言葉の変化、行動の変化、心身の変化などがあります。厚生労働省が示す自殺予防に関する資料でも、死にたいという発言や絶望感、周囲との交流の減少、睡眠や食欲の変化などが注意すべきサインとして挙げられています。
具体的には、次のような変化が見られることがあります。
- 「消えたい」「生きていても意味がない」など、自分の存在を否定する発言が増える。
- 急に人付き合いを避けたり、学校や職場を休みがちになったりする。
- 眠れない、食欲が極端に落ちる、疲れが取れないなど、心身の不調が続く。
- 以前は楽しんでいた活動への関心を失い、身だしなみや日常生活への関心が薄れる。
- 自分を強く責めたり、周囲に迷惑をかけていると繰り返し話したりする。
- 大切な物を人に譲る、別れを思わせる発言をするなど、普段とは異なる行動が見られる。
- それまで強い苦痛を訴えていた人が、理由がはっきりしないまま急に落ち着いたように見える。
ただし、これらのサインが見られる人すべてに自殺の危険があるわけではなく、反対に、明らかな変化が見えないまま深刻な状態に陥る人もいます。チェックリストだけで安全かどうかを判断することはできません。
大切なのは、単独の行動だけで決めつけず、複数の変化や本人の発言、直近の出来事を総合的に捉えることです。身近な人が「消えたい」「死にたい」と話した場合には、冗談や一時的な弱音だと決めつけず、真剣に受け止めてください。
本人の安全が心配なときは、率直に「今、自分を傷つけたいと思っている?」「死にたいと思うほどつらいの?」と尋ね、落ち着いて話を聴くことができます。質問することを恐れて話題を避けるよりも、本人が苦しみを言葉にできる機会をつくることが大切です。
具体的な計画がある、今にも自分を傷つけそうだといった切迫した状況では、本人を一人にせず、速やかに専門家や救急につないでください。日本国内で緊急の危険がある場合は、119番で救急車を要請するなど、緊急対応を優先します。
【自殺予防と周囲の対応】家族・友人・職場ができる具体的な支援
身近な人が苦しんでいると気づいたとき、「何を言えばよいのか分からない」と戸惑うのは自然なことです。相手の問題をすべて解決できなくても、話を聴き、孤立を防ぎ、必要な支援につなぐことはできます。
厚生労働省が示す自殺予防の考え方では、悩みに気づいて声をかけること、本人の話を聴いて必要な支援につなぐこと、その後も見守ることが重要とされています。
1.否定せず、話を聴く
本人が苦しさを打ち明けたら、すぐに正論を伝えたり、解決策を押しつけたりするのではなく、まずは話を聴いてください。「そんなことで悩まなくていい」「もっと前向きに考えよう」「家族のために頑張って」といった言葉は、善意からであっても、本人に自分の気持ちを理解してもらえないと感じさせることがあります。
「そこまでつらかったんだね」「話してくれてありがとう」「一人で抱えなくていいよ」といった言葉で、苦しみを受け止める姿勢を示しましょう。無理に励ましたり、本人の感情を否定したりする必要はありません。
2.専門家や相談窓口につなぐ
本人の状態が深刻な場合、家族や友人だけで支えようとするのは危険です。医療機関、自治体の精神保健福祉センター、保健所、学校のスクールカウンセラー、職場の産業医など、状況に合った専門的な支援につなぐことを検討してください。
相談することに抵抗がある人には、「一緒に窓口を調べよう」「予約を取るところまで手伝うよ」と具体的に提案すると、最初の一歩を踏み出しやすくなる場合があります。
3.本人の生活上の負担を減らす
心の不調が強いときには、日常の小さな作業でも大きな負担になることがあります。食事や通院の手配、学校や職場への連絡、家事の分担、生活上の手続きなど、本人が抱えている課題を具体的に整理し、無理のない範囲で支援しましょう。
経済的な困難があるなら生活困窮に関する相談先へ、職場の問題なら労働相談や産業保健の窓口へ、学校での悩みなら信頼できる教職員やスクールカウンセラーへつなぐなど、苦しみの原因に応じた対応が必要です。
4.一度の声かけで終わらせず、見守る
一度話を聴いたからといって、本人の状態がすぐに改善するとは限りません。「その後、少し眠れている?」「病院には一緒に行こうか?」など、継続して声をかけることも大切です。
ただし、支える側がすべての責任を負う必要はありません。本人の安全を守るために、必要に応じて家族や専門職、関係機関と協力してください。命に関わる危険がある場合は、本人が支援を拒んでいても、緊急の対応を優先する必要があります。
自殺予防は、特別な言葉をかけられる人だけが担うものではありません。変化に気づき、話を聴き、適切な支援につなぐ。この一連の行動を、周囲の人や組織で分担できる体制を整えることが重要です。
【自殺予防の相談窓口】本人も家族も利用できる支援先
つらい気持ちを身近な人に話せない場合でも、相談できる窓口があります。本人だけでなく、家族や友人など、身近な人の様子が心配な人も利用できます。
厚生労働省が案内する主な電話相談窓口は次のとおりです。受付時間や利用条件は、相談先の公式案内で確認してください。
- #いのちSOS:0120-061-338。無料で、24時間365日相談を受け付けています。死にたい、消えたい、生きることに疲れたといった気持ちを相談できます。
- よりそいホットライン:0120-279-338。24時間対応で、ガイダンスにより専門的な相談を選べます。外国語での相談にも対応しています。
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556。電話をかけた地域の公的な相談機関につながります。対応する曜日や時間は地域によって異なります。
- いのちの電話:0120-783-556。無料の電話相談で、毎日16時から21時まで受け付けています。毎月10日には、午前8時から翌日午前8時までの相談時間も設けられています。
電話で話すことが難しい場合は、厚生労働省の「まもろうよ こころ」で、SNSなどを利用した相談窓口を探す方法もあります。話したい内容が整理できていなくても、うまく説明できなくても、相談を始めることはできます。
子どもや若者の場合、保護者に話すことが難しければ、信頼できる教職員、スクールカウンセラー、親戚など、別の大人に相談する方法もあります。本人が話しやすい相手や手段を選ぶことが大切です。
もし今、自分自身が死にたいほどつらいと感じているなら、すべてを一度に解決しようとしなくて構いません。まずは信頼できる人に「今、一人でいるのがつらい」「自分を傷つけることが心配」と伝え、誰かと一緒に過ごせる場所や専門の相談先につながってください。
【自殺対策基本法の制定20年】統計の改善だけでは解決しない若者の課題
2026年は、自殺対策基本法が制定されてから20年に当たります。同法は2006年6月21日に公布され、自殺対策を社会全体で総合的に進めるための基本的な枠組みを定めました。
厚生労働省の令和8年版自殺対策白書は、この20年間の取り組みを振り返るとともに、自殺者数の推移や子ども・若者をめぐる状況を分析しています。2025年の自殺者総数が過去最少となったことは重要な変化ですが、小中高生が過去最多となった事実は、引き続き対策が必要であることを示しています。
若者の自殺対策では、危険な状態になってから相談先を案内するだけでは十分ではありません。学校での悩みを早い段階で受け止める仕組み、子どもの心身の不調を把握する体制、家庭や学校以外にも安心して話せる場所、必要な医療や福祉につながる支援が大切です。
いじめの有無だけを確認して終わるのではなく、学業や進路、友人関係、家庭環境、健康状態などを幅広く捉える必要があります。子ども本人が悩みを言葉にできないことも考慮し、周囲の大人が小さな変化に気づける環境を整えることが重要です。
2025年6月には自殺対策基本法の改正法が公布されており、2026年の対策を考えるうえでは、法律や計画が存在することだけでなく、支援が実際に必要な人へ届いているかを検証する視点も欠かせません。
また、警察庁の自殺統計と厚生労働省の人口動態統計では、集計の目的や方法が異なります。数字を比較するときは、どの統計を使っているのか、暫定値なのか確定値なのか、どの年代を対象としているのかを確認が必要です。
自殺者数の減少は、社会全体の取り組みを考えるうえで意味のある成果です。しかし、総数が減ったからといって、相談につながれない人や、支援から取り残されている子どもがいなくなったわけではありません。年代別・背景別のデータを確認し、必要な人に支援が届く仕組みを改善し続けることが大切です。
【自殺する人】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:自殺する人には共通した性格や特徴がありますか?
A1:特定の性格だけで自殺の危険を判断することはできません。明るく見える人や、普段から責任感が強い人が苦しみを抱えている場合もあります。性格で決めつけるのではなく、本人の発言や普段との変化、置かれている状況に目を向けることが大切です。
Q2:2026年最新の自殺者数は何人ですか?
A2:2026年10月時点で公表されている最新の年間確定値は2025年分で、国内の自殺者数は19,188人です。一方、小中高生は538人で、1980年以降の統計で最多となりました。これは2026年中の自殺者数ではなく、2025年の実績です。
Q3:身近な人が「死にたい」と話したとき、どう対応すればよいですか?
A3:発言を軽く扱わず、落ち着いて話を聴いてください。否定したり、安易に励ましたりするのではなく、本人のつらさを受け止め、必要に応じて医療機関や相談窓口につなぎます。差し迫った危険がある場合は一人にせず、救急などの緊急支援を求めてください。
2026年10月に公表された令和8年版自殺対策白書は、2025年の自殺者数が19,188人となり、統計開始以来初めて2万人を下回ったことを示しました。その一方、小中高生の自殺者数は538人と過去最多を更新しています。この二つの数字は、自殺対策の成果と、今なお解決されていない課題が同時に存在することを物語っています。
自殺する人の心理や特徴を理解するうえで重要なのは、本人の性格や意思の強さだけに原因を求めないことです。健康問題、経済的困難、家庭や職場での問題、学校生活の悩み、孤立などが重なり、本人が解決の選択肢を見失うことがあります。
【プロの結論】 自殺予防で重視すべきなのは、特定の特徴を持つ人を見つけ出すことではなく、苦しみのサインに気づき、本人の話を聴き、必要な支援へ確実につなぐことです。個人の心のケアに加え、経済的な支援、職場環境の改善、学校での相談体制、医療や福祉との連携を進めることが欠かせません。
身近な人の様子がいつもと違うと感じたら、決めつけずに声をかけてください。そして、自分自身が苦しんでいる場合も、一人で抱え込む必要はありません。家族や友人、専門家、公的な相談窓口など、頼れる先はあります。助けを求めることは、弱さではなく、自分の命と生活を守るための大切な行動です。