2026年現在、日本の献血は本当に不足しているのでしょうか。厚生労働省と日本赤十字社の公表資料を確認すると、2025年度(令和7年度)の延べ献血者数は500万1,000人に達し、献血率は6.2%でした。輸血用血液製剤と血漿分画製剤の原料血漿についても、必要な供給量を確保できたと報告されています。
しかし、数字だけを見て安心するのは早計です。10代〜30代の献血者数は前年度から約2万3,000人減少し、献血を支える世代の構成も変化しています。加えて、輸血用血液製剤の需要がほぼ横ばいで推移する一方、免疫グロブリン製剤などに使われる原料血漿の需要は増加しています。2026年の献血不足状況を理解するには、現在の供給実績と、将来の安定供給に残された課題を分けて考える必要があります。
【2026年最新】献血不足は深刻?2025年度は500万1,000人を確保

2026年の献血状況を判断するうえで、まず押さえたいのが2025年度の実績です。厚生労働省の令和8年度第1回献血推進調査会の議事録では、日本赤十字社から2025年度の献血実績と供給状況が報告されています。
それによると、延べ献血者数は前年度から約1万4,000人増加した500万1,000人でした。献血率は前年度と同じ6.2%です。10代〜30代の献血者数は減少したものの、全体としては輸血用血液製剤と血漿分画製剤の原料血漿を安定供給するために必要な血液量を確保できました。
つまり、2026年10月時点で確認できる最新の通年実績からは、全国的に必要な血液が不足し、医療への供給が維持できなかったという状況は読み取れません。一方、必要量を確保できたことと、将来にわたって安定供給を続けられることは別の問題です。
ここで注意したいのが「延べ献血者数」という言葉です。同じ人が年間に複数回献血した場合も、それぞれ1回として数えます。そのため、500万1,000人は500万1,000人の異なる個人が献血したという意味ではありません。
また、献血率6.2%も、単純に日本の全人口の6.2%が献血したという意味ではありません。献血事業で用いる対象人口と集計方法に基づく指標です。献血者数の総数だけでなく、年代別の参加状況や継続して献血する人の動向も合わせて見ることが重要です。
2026年の現状を端的に整理すると、足元の必要量は確保できているものの、将来の供給基盤には不安が残るというのが実態です。
【数字で比較】献血者数・献血率・血液供給の現状
献血不足の状況を判断するには、献血者数だけでは不十分です。献血率、年代別の変化、医療機関への供給実績、原料血漿の確保量を合わせて確認すると、問題の所在が見えてきます。
以下は、厚生労働省の献血推進調査会の報告と、日本赤十字社の2025年度事業実績に基づく主要な数値です。
| 確認項目 | 2025年度の実績・状況 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 延べ献血者数 | 500万1,000人 | 前年度から約1万4,000人増加 |
| 献血率 | 6.2% | 前年度と同水準 |
| 10代〜30代の献血者数 | 前年比約2万3,000人減 | 減少率は1.4% |
| 輸血用血液製剤の供給 | 合計1,752万単位 | 必要な血液量を確保 |
| 原料血漿の供給量 | 合計120万リットル | 血漿分画製剤の原料を確保 |
| 2026年度の献血確保目標量 | 合計224万リットル | 全血採血と成分採血を合わせた目標 |
特に注目したいのは、献血者数が全体では増加しているにもかかわらず、若年層は減少している点です。全体の人数だけを見ると改善しているように映りますが、年齢構成の変化を無視すると、将来の献血者を確保できるかどうかという問題を見落とします。
なお、輸血用血液製剤の供給実績は「単位」、原料血漿の供給実績は「リットル」、献血者数は「人」で表されます。これらは異なる指標であり、数値を直接比較して不足の大小を判断することはできません。
厚生労働省が2026年度の献血推進計画で定めた確保目標量は、全血採血による134万リットルと成分採血による90万リットルの合計224万リットルです。成分採血の内訳は、血漿成分採血60万リットル、血小板成分採血30万リットルとなっています。
2025年度に必要量を確保できたという実績は重要ですが、2026年度も同じ条件で供給が続くと保証するものではありません。医療需要や季節による献血者数の変動を踏まえ、継続的に確保状況を確認する必要があります。
【なぜ減る?】10代・20代・30代の献血者数が減少する理由
献血不足をめぐる最大の課題の一つが、10代・20代・30代の献血者数の減少です。厚生労働省が公表した2025年度の実績では、この年代層の献血者数は前年度比で約2万3,000人、1.4%減少しました。
加えて、厚生労働省の2026年4月の広報記事では、10代〜30代の献血者数が過去10年間で約27%減少したことが紹介されています。若年層の減少は2025年度だけに限った現象ではなく、長期的に続いている課題です。
少子化で献血できる世代そのものが減っている第一の理由は、少子化による人口構造の変化です。献血を希望しても、年齢や体重、血色素量、健康状態などの基準を満たす必要があります。そもそも若い世代の人口が減れば、献血に参加できる人の母数も小さくなります。
一方で、輸血を必要とする患者がいる医療現場では、血液製剤を安定して確保しなければなりません。献血する側の人口が縮小するなかで、医療需要に対応する仕組みを維持することが課題になっています。
高校で献血を経験する機会が減っている第二の理由は、若い世代が初めて献血を経験する機会の減少です。
厚生労働省の若年層向け資料では、400mL献血の普及や医療需要の変化などに伴い、高校献血の実施数・実施率が減少傾向にあることが示されています。400mL献血は男性17歳以上、女性18歳以上という年齢基準があるため、高校生のうち献血できる人が限られることも背景の一つです。
また、新型コロナウイルス感染症の流行は、学校や企業での集団献血の機会にも影響しました。高校時代に献血を経験し、その後も定期的に協力するという流れを作りにくくなったことが、長期的な課題として残っています。
初回献血者の回復だけでは減少を埋めきれない日本赤十字社の報告では、10代〜20代の初回献血者数は、コロナ禍の影響を受けた2020年度に大きく減少し、その後は徐々に回復しています。ただし、献血可能人口の減少もあり、コロナ禍以前の水準には戻っていません。
2025年度には、10代の献血者数が前年度より全国で2,690人増加しました。約20の都道府県で増加した一方、都道府県ごとに設定された目標には届いていない状況も報告されています。
この数字は、若年層の献血が一様に減り続けているわけではなく、年代や地域によって変化が異なることを示しています。10代を中心に下げ止まりの兆しがあるものの、20代・30代を含めた若年層全体の減少を解消するまでには至っていません。
50代以上への依存が強まると何が問題なのか年代別の献血者数を見ると、2000年代初頭には20代・30代が大きな割合を占めていましたが、2025年度には50代以上の献血者数が増加しています。厚生労働省は、コロナ禍以降の40代の減少も課題として挙げています。
現在の献血を支える世代が高年齢層に移っていること自体が、直ちに供給不能を意味するわけではありません。しかし、年齢や健康状態によって献血を続けられなくなる人がいるため、若い世代が新たに参加し、長期的に協力する流れを作らなければ、将来の供給基盤が細くなるおそれがあります。
重要なのは、若者に献血を呼びかけるだけでなく、学校や職場で参加しやすい機会を整え、初回献血から継続的な協力につなげることです。
【見落とされがちな要因】輸血用血液製剤と原料血漿の需要は別問題
献血不足を考える際に見落とされやすいのが、献血で集めた血液の使い道です。献血血液は、輸血に使う血液製剤だけでなく、さまざまな医薬品の原料にもなります。両者では需要の動きが異なるため、輸血用血液製剤の供給が安定していても、献血事業全体の課題がなくなるわけではありません。
輸血用血液製剤の需要はおおむね横ばい日本赤十字社が厚生労働省の献血推進調査会で報告した実績によると、2015年度から2025年度までの輸血用血液製剤の供給需要は、全体としてほぼ横ばいで推移しています。
輸血用血液製剤には、赤血球製剤、血漿製剤、血小板製剤があります。手術や事故による出血、血液疾患の治療など、患者の状態に応じて必要な製剤が異なります。すべての血液型や製剤が、同じ時期に同じ量だけ必要になるわけではありません。
そのため、献血者数の合計が増えたとしても、特定の製剤や血液型について、必要な時期に必要な量を確保できるとは限りません。医療現場の需要に合わせて採血と供給を調整することが大切です。
原料血漿の需要は増加しているもう一つの重要な変化が、血漿分画製剤に使われる原料血漿の需要増加です。
血漿分画製剤とは、血液から分離した血漿を原料として、特定のタンパク質などを取り出して製造する医薬品です。代表的なものに免疫グロブリン製剤やアルブミン製剤、血液凝固に関わる製剤があります。
厚生労働省の献血推進調査会で日本赤十字社が説明した内容によると、原料血漿の採血量は増加傾向にあり、輸血用血液製剤向けの採血量を上回る状況が続いています。2025年度の原料血漿供給量は、凝固製剤用14万リットル、一般製剤用106万リットルの合計120万リットルでした。
需要増加の背景の一つとして挙げられているのが、自己免疫性神経疾患などに対する免疫グロブリン製剤の使用増加です。免疫グロブリン製剤は、複数の疾患の治療に用いられています。
この変化が示すのは、献血の必要量を考える際に、輸血用血液製剤だけを見ていては不十分だということです。輸血用製剤の需要が安定していても、原料血漿を必要とする医薬品の需要が増えれば、献血で確保すべき血液量にも影響します。
2026年度は成分採血への協力も重要厚生労働省が2026年2月27日に告示した「令和8年度の献血の推進に関する計画」では、2026年度に確保すべき血液量を合計224万リットルとしています。そのうち90万リットルは成分採血によるもので、血漿成分採血60万リットル、血小板成分採血30万リットルが目標です。
成分献血は、採血した血液から血漿や血小板などの必要な成分を分離し、残りの成分を体内に戻す方法です。原料血漿の確保や血小板製剤の供給に対応するうえで、重要な役割を担っています。
ただし、成分献血には年齢や体重、健康状態などの基準があり、全員が協力できるわけではありません。献血会場での問診や検査を経て、本人の健康と安全を優先しながら協力することが基本です。
【血液はどう届く?】血液製剤の安定供給を支える仕組み
献血不足を正しく理解するには、献血した血液がどのように患者へ届くのかを知ることも大切です。日本では、献血で集められた血液を日本赤十字社が検査・製造・管理し、医療機関の需要に応じて血液製剤を供給しています。
献血から医療機関への供給まで献血の流れは、単に血液を集めて病院へ届けるだけではありません。安全性を確保し、製剤ごとの特性に応じて管理する必要があります。
- 献血会場で問診や健康状態の確認を行い、採血する。
- 採血した血液について必要な検査を実施する。
- 血液を赤血球、血漿、血小板などの製剤に加工する。
- 製剤ごとの保存条件や有効期間を守って管理する。
- 医療機関の需要に応じて供給する。
この一連の仕組みを維持するには、採血だけでなく、検査、製造、保管、輸送、需要予測までを一体的に管理しなければなりません。全国の献血会場で血液を集めていても、必要な製剤を必要な時期に供給できなければ、安定供給とはいえないためです。
血液には長期保存できない製剤がある献血が継続的に必要とされる理由の一つは、血液製剤の有効期間に限りがあることです。日本赤十字社の献血に関する資料では、赤血球製剤の有効期間は採血後21日間、血小板製剤は採血後4日間、血漿製剤は凍結保存で採血後1年間と説明されています。
特に血小板製剤は有効期間が短く、長期間にわたって大量に備蓄しておくことができません。需要を見込みながら、日々の採血と供給を調整する必要があります。
また、血液は人工的に製造できるものではなく、献血者の健康を守るため、個人が献血できる回数や量にも制限があります。ある時期に多くの人が献血したからといって、その後の需要を長期間まかなえるわけではありません。
こうした事情から、全国の献血者数が年間500万人規模で確保されていても、季節や地域によって協力者が減れば、需給調整が難しくなる可能性があります。冬期に献血への協力が呼びかけられるのも、安定供給を維持するためです。
【2026年の対策】献血推進2025の評価と「はたちの献血」の役割
若年層の献血者数を増やすため、国と日本赤十字社は広報活動や学校・企業との連携を進めています。2026年の取り組みを理解するうえでは、これまでの中期目標の評価と、現在の献血推進計画を確認が必要です。
献血推進2025の中間評価で見えた課題厚生労働省は、2021年度から2025年度までの5年間を対象とする中期目標「献血推進2025」を設定し、献血の推進に取り組んできました。当初は新型コロナウイルス感染症の影響を見通すことが難しかったため、中間年にあたる2023年度を目途に実績を確認し、必要に応じて見直す方針が取られました。
中間評価では、若年層の人口に対する献血者数の割合が低下していたことや、複数回献血者数、献血Web会員サービス「ラブラッド」の登録者数、献血推進に協力する企業・団体数などの指標が、目標値に届いていないことが課題として示されました。
その後も、若年層の献血者数は減少傾向にあります。2025年度には10代を中心に下げ止まりの兆しが見られたものの、若年層全体の減少を解消するには至っていません。
2026年「はたちの献血」キャンペーン厚生労働省、都道府県、日本赤十字社は、献血者が減少しやすい冬期に合わせ、毎年1月から2月まで「はたちの献血」キャンペーンを実施しています。2026年は1月1日から2月28日まで行われました。
2026年のキャッチフレーズは、「誰かの今をつないでいく。はたちの献血」です。厚生労働省の発表によると、応募された188点の候補作品から選ばれました。若い世代を中心に、献血が誰かの治療や生活を支えることを伝え、参加への理解と協力を促す狙いがあります。
こうしたキャンペーンは、献血への関心を高めるための取り組みです。ただし、ポスターやSNSでの呼びかけだけで、若年層の減少を根本的に解決できるわけではありません。献血できる場所や時間を確保し、初回献血を経験した人が再び参加しやすい環境を整えることも必要です。
学校・企業・地域で献血の機会を増やす厚生労働省の2026年度献血推進計画では、学校での啓発に加え、企業や団体と連携した献血の推進、初回献血者への継続的な協力の呼びかけなどが盛り込まれています。
特に、学校や職場で献血に触れる機会を作ることは、若年層の参加を考えるうえで重要です。献血の必要性を知っていても、近くに会場がない、予定が合わない、参加方法がわからないといった理由で、実際の行動に結びつかない場合があるためです。
また、企業が献血のための休暇を取りやすくしたり、地域で献血バスの運行予定を周知したりすることも、参加のハードルを下げる方法です。厚生労働省は、小中学生の段階から献血に対する理解を深めることも推進方針に掲げています。
今後の対策を評価する際には、キャンペーンの実施回数や広報の閲覧数だけでなく、初回献血者が増えたか、若年層の献血者数が回復したか、複数回献血につながったかという結果を見る必要があります。
【献血不足状況】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年現在、日本では献血が不足しているのですか?
A1:2025年度の実績では、延べ献血者数は500万1,000人で、輸血用血液製剤と原料血漿の安定供給に必要な血液量は確保されました。ただし、若年層の献血者数は減少しており、将来の安定供給には課題が残っています。全国の実績が確保されていることと、すべての地域・時期・製剤で需給上の課題がないことは同じではありません。
Q2:献血者数が500万人いるのに、なぜ若年層の献血が問題になるのですか?
A2:献血者数全体が確保されていても、献血を支える世代の構成が変化すると、将来の供給基盤が弱くなるおそれがあるためです。2025年度は10代〜30代の献血者数が前年比約2万3,000人減少しました。少子化により献血可能人口も減るなか、初回献血や継続的な協力を増やす取り組みが必要です。
Q3:献血不足を解消するために、個人ができることはありますか?
A3:まずは日本赤十字社の献血ルームや献血バスの予定を確認し、自身の年齢や健康状態などの条件を満たす場合に協力を検討できます。初めての人は、献血の種類や当日の流れを事前に確認すると参加しやすくなります。献血できるかどうかは、問診や検査、採血基準に基づいて判断されます。体調に不安がある場合は無理をせず、会場の案内に従ってください。
【プロの結論】献血不足を見極める3つの視点
2026年の献血不足状況を読み解くうえで、押さえておきたい要点は3つあります。
第一に、2025年度は必要な血液量を確保できていたという事実です。延べ献血者数500万1,000人、献血率6.2%という数字から、全国の献血事業が直ちに供給不能に陥っているわけではないことがわかります。
第二に、若年層の減少は、将来の安定供給に関わる構造的な問題だということです。10代〜30代の献血者数が前年比約2万3,000人減少し、過去10年間でも大きく減っている状況は、短期的な献血者数の増減だけでは判断できません。少子化、高校献血の機会の減少、初回献血から継続的な協力につながる仕組みなど、複数の要因を合わせて考える必要があります。
第三に、血液製剤の需要は一つではないという点です。輸血用血液製剤の需要がほぼ横ばいである一方、免疫グロブリン製剤などに使う原料血漿の需要は増加しています。2026年度の確保目標量や実際の供給状況を確認する際にも、献血者数だけでなく、どの製剤にどれだけの血液が必要なのかを見ることが欠かせません。
献血不足という言葉から、現在すぐに医療へ血液が届かなくなる状況を想像する可能性があります。しかし、今回確認できる公的資料が示しているのは、必要量を確保できている現状と、その状態を将来も維持するための課題が同時に存在するということです。
これから献血の状況を判断する際は、延べ献血者数や献血率に加え、年代別献血者数の推移、原料血漿の需要、製剤ごとの供給実績、若年層への対策の効果を確認することが大切です。安定供給を支えるのは、一度に多くの人が献血することだけではありません。必要な血液を継続的に確保できる仕組みと、それを支える人々の参加です。