カーリングの試合中、選手たちがフルーツやお菓子を口にしながら、真剣な表情で話し合う「もぐもぐタイム」。2018年の平昌五輪で日本女子代表のLS北見が見せたこの光景は、競技の魅力を伝える名場面として全国的な話題になりました。北海道の銘菓「赤いサイロ」が品薄になるほどの反響を呼び、カーリングを初めて観戦する人が増えるきっかけにもなりました。
ただし、もぐもぐタイムは単なるおやつ休憩ではありません。選手がエネルギーを補給し、前半の展開を振り返りながら後半の戦略を確認する、競技上の意味を持つハーフタイムです。また、一般的な4人制カーリングの休憩時間は原則5分間であり、「7分間」とする説明には競技形式の違いがあります。2025年の日本カーリング選手権大会 横浜2025や、2026年のミラノ・コルティナ五輪で見られた補食の実例も交え、その実態を解説します。
【もぐもぐタイムカーリングとは?】補食と作戦会議を兼ねる時間

もぐもぐタイムとは、カーリングの試合中盤に設けられるハーフタイムなどで、選手が軽食を取りながら休息や作戦確認を行う様子を指す呼び名です。競技規則に定められた正式な競技名称ではなく、選手たちが食べ物を口にする姿から広まった親しみやすい表現です。
カーリングは、氷上の目標地点である「ハウス」にストーンを近づけ、エンドごとの得点を競う競技です。1試合は複数のエンドで構成され、4人制の10エンドの試合では、投球の選択だけでなく、相手のストーンの配置や残りの投球数を踏まえた判断も求められます。試合が長時間に及ぶこともあり、選手は集中力を維持しながらプレーを続けなければなりません。
そこで重要になるのが、試合の折り返し地点での休憩です。選手は水分や軽食を取り、前半のショットが狙いどおりだったか、相手がどのような戦術を使っているかを振り返ります。後半に向けて、攻めるのか、守るのか、どこにストーンを配置するのかといった判断を共有する時間にもなります。
つまり、もぐもぐタイムは「食べる時間」と「考える時間」が重なったものです。お菓子を食べること自体が競技の目的なのではなく、長い試合を戦い抜くためのコンディション管理と、チーム内の意思疎通を支える役割があります。
なお、ハーフタイムにコーチらとコミュニケーションを取れる範囲は、大会規則に従います。通常のエンド間の短い休止と、試合中盤のハーフタイムを同じものとして考えないことも、ルールを理解するうえで大切です。
【なぜ7分間と言われる?】通常は5分間というルールの真相
もぐもぐタイムを調べると「7分間の休憩」という説明が見つかることがあります。しかし、一般的な4人制のカーリングで、女子の五輪競技などに採用される10エンドの試合では、ハーフタイムは原則5分間です。7分間という数字を、すべてのカーリングの試合に当てはめるのは正確ではありません。
World Curlingの競技規則では、試合の中間地点に当たるエンドの終了後にハーフタイムを設け、通常の休憩時間を5分間としています。一方、車いすミックスダブルスには7分間とする規定があります。競技形式の違いを区別せずに情報を読むと、「カーリングのもぐもぐタイムは7分」と誤解する原因になります。
4人制の10エンドの試合では、第5エンド終了後がハーフタイムです。8エンド制の試合では、原則として第4エンド終了後が折り返し地点になります。どのエンドで休憩に入るかは、試合の形式によって変わります。
また、5分間すべてを食事に使うわけではありません。選手によっては飲み物やフルーツを口にしながら、短い時間で戦術を確認します。補食を早めに済ませ、後半の投球に集中できる状態を整えることも必要です。
ここで押さえておきたいのは、ハーフタイムが「お菓子を食べるためだけに設けられた時間」ではないという点です。休憩の目的は、選手がコンディションを整え、後半の競技に備えること。その時間の使い方の一つとして、もぐもぐタイムが定着しています。
【2018年平昌五輪】LS北見のもぐもぐタイムが話題になった理由
もぐもぐタイムが全国的に知られるようになった大きな転機は、2018年の平昌五輪でした。女子日本代表のLS北見は、現在のロコ・ソラーレにつながるチームとして出場し、銅メダルを獲得。試合中に選手たちが軽食を食べ、自然な表情で話し合う様子がテレビ中継などを通じて広まりました。
当時の注目を集めたのは、トップアスリートの真剣なプレーと、休憩中の親しみやすい姿との対比です。試合中は一投ごとに緊張感が漂う一方、ハーフタイムにはフルーツやお菓子を口にしながら、仲間同士で言葉を交わす。その様子が、カーリングという競技を身近に感じさせました。
報道では、選手たちが食べていた北海道北見市の銘菓「赤いサイロ」にも大きな関心が集まりました。製造元の清月は、平昌五輪での話題化を受けて注文が急増したと日刊スポーツが報道しています。2018年2月には通常の10倍以上の注文があり、インターネット注文の発送待ちが長期化したほか、一時的に受注を停止する事態にもなりました。
この反響は、単にお菓子が紹介されたというだけではありません。地元の名産品、選手たちの自然な振る舞い、五輪の試合展開が結びつき、競技の外側にも話題が広がった事例です。
加えて、「もぐもぐタイム」は2018年の「ユーキャン新語・流行語大賞」トップ10にも入りました。カーリングの専門用語ではなかった表現が一般に浸透したことからも、当時の社会的な反響の大きさがうかがえます。
もちろん、LS北見の魅力は補食の場面だけではありません。試合中のコミュニケーションや正確なショット、銅メダルを獲得した競技力があったからこそ、ハーフタイムの姿も印象深いものになりました。もぐもぐタイムは、競技そのものへの関心を広げた入り口の一つだったのです。
【何を食べている?】ロコ・ソラーレとフォルティウスの補食を比較
カーリング選手が食べるものは、全チーム共通ではありません。フルーツ、ようかん、どら焼き、チーズケーキなど、実際に報道や中継で確認された食品にも幅があります。チームの準備や遠征先の事情、選手の好みなどによって選択が異なるため、「カーリングでは必ずこのお菓子を食べる」という決まりはありません。
| 時期・チーム | 報道・中継で紹介された食品 | 注目ポイント |
|---|---|---|
| 2018年平昌五輪・LS北見 | フルーツ、ようかんなどの軽食、「赤いサイロ」 | 地元の銘菓が広く知られ、社会的なブームにつながった。 |
| 2022年北京五輪・ロコ・ソラーレ | どら焼き、ようかんなどの和菓子、フルーツ | 遠征中に用意した補食の工夫が、後年のテレビ解説でも紹介された。 |
| 2025年日本カーリング選手権大会 横浜2025 | 大会公式の映像で各チームの補食の様子を紹介 | チームごとの違いを観戦する楽しみが広がった。 |
| 2026年ミラノ・コルティナ五輪・フォルティウス | フルーツ、バナナ | 五輪中継で実際の補食風景が紹介された。 |
2018年の「赤いサイロ」は、もぐもぐタイムを象徴する食品として知られるようになりました。北海道北見市の菓子店・清月が製造するチーズケーキで、LS北見の選手たちが食べる姿が注目され、地元の名産品が全国的に知られるきっかけとなりました。
一方、ロコ・ソラーレの北京五輪での補食については、2026年の五輪中継で解説を務めた吉田知那美選手が、どら焼きやようかんなどの和菓子を比較的よく食べていたと振り返っています。遠征中の食料調達には工夫が必要で、当時の補食選びにはスピードスケート選手の新濱立也選手が関わっていたことも、デイリースポーツが報じました。
2026年のミラノ・コルティナ五輪で日本代表として出場したフォルティウスも、ハーフタイムの補食が話題になりました。大会初戦のスウェーデン戦ではフルーツを口にする様子が報じられ、2月14日のスイス戦では、テレビ中継で吉村紗也香選手がバナナを食べる姿が紹介されています。
こうした例から分かるのは、もぐもぐタイムの食品が固定されているわけではないということです。甘味のある食品を選ぶチームもあれば、果物を中心に補給するチームもあります。観戦するときは、特定のお菓子を探すだけでなく、各チームがどのような形で休憩時間を使っているかにも注目すると、競技への理解が深まります。
【2025年横浜大会・2026年五輪】もぐもぐタイムの最新事情
もぐもぐタイムは、2018年の平昌五輪だけで終わった話題ではありません。2025年2月に横浜BUNTAIで開催された日本カーリング選手権大会 横浜2025でも、日本カーリング協会の公式映像で選手たちの補食風景がまとめられました。女子の優勝チームはフォルティウス、男子はSC軽井沢クラブでした。
同大会では、JA全農が選手を食で応援する「もぐもぐブース」を設け、来場者向けには大会オリジナルのおにぎりも販売しました。選手の補食を観戦の楽しみとして捉えるだけでなく、食を通じて大会全体を盛り上げる取り組みが行われた点も特徴です。
続く2026年のミラノ・コルティナ五輪では、女子日本代表としてフォルティウスが出場しました。2月12日のスウェーデンとの初戦は4対8で敗れたものの、2月14日のスイス戦では7対5で勝利。中継で映ったバナナなどの補食風景が、試合の展開とともに話題になりました。
一方、ロコ・ソラーレは2018年平昌五輪と2022年北京五輪で日本女子のメダル獲得に貢献したチームですが、2026年の五輪代表はフォルティウスでした。過去のもぐもぐタイムの映像と、2026年の日本代表の映像を混同しないことも、最新情報を整理するうえで重要です。
加えて、2026年6月7日から14日に開催された日本カーリング選手権大会 横浜2026では、男女ともにSC軽井沢クラブが優勝しました。日本カーリング協会の大会情報やJA全農の発表を確認すると、もぐもぐタイムへの関心が続く一方で、競技の中心にあるのは各大会の結果と、代表を争うチームの実力であることが分かります。
2026年10月現在、もぐもぐタイムは特定のチームだけに結びつく現象ではありません。ロコ・ソラーレが話題の起点となり、フォルティウスをはじめとするチームの補食風景も観戦コンテンツの一つとして親しまれています。
【テレビに映る条件と本当の役割】補食・栄養・作戦会議の仕組み
テレビ中継で、ある試合では選手がお菓子を食べる姿が映り、別の試合ではほとんど紹介されないことがあります。これは、もぐもぐタイムが必ず独立した番組コーナーとして放送されるわけではないためです。実際に映るかどうかは、カメラの配置、中継するシート、番組の進行、実況や解説が取り上げる内容などに左右されます。
複数の試合が同時に進む大会では、テレビがすべての試合の休憩時間を同じように映すことはできません。2025年の日本カーリング選手権大会 横浜2025でも、地上波やBSの放送を補完するオンライン配信が用意されました。こうした中継体制の違いを考えると、あるチームのもぐもぐタイムが映らなかったからといって、そのチームが補食をしていないとは限りません。
では、選手はなぜ試合中に食べるのでしょうか。大きな理由の一つは、長い試合の途中でエネルギーを補給することです。カーリングは、ストーンを投げる技術だけでなく、試合全体を通した集中力や判断力も必要とします。軽食や果物などを短時間で取り入れることは、後半のプレーに備えるための選択肢になります。
ただし、選手が食べているものを見ただけで、栄養摂取量や体調管理の具体的な方法まで断定することはできません。画面に映った食品は、その瞬間の補食の一例です。各選手がどのような栄養計画を立てているかは、本人やチームが公表している情報と分けて考える必要があります。
もう一つの役割は、作戦の確認です。カーリングでは、ストーンの位置関係や相手のショットの傾向、残りのエンドで必要な得点などによって戦術が変わります。休憩中に前半を振り返り、チーム内で判断を共有することは、後半の戦い方を整えるうえで意味があります。
そして、もぐもぐタイムがテレビ視聴者にとって親しみやすいのは、選手の人柄やチームの雰囲気が伝わる場面だからです。競技中の緊張感だけでなく、選手が食事を取りながら会話する様子も見えることで、カーリングの魅力が立体的に伝わります。ただし、映像で見えるのは休憩中の一場面であり、それだけでチームの戦術や選手の実力を評価することはできません。
【もぐもぐタイムカーリング】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:カーリングのもぐもぐタイムは何分間ですか? A1:一般的な4人制の10エンドの試合では、第5エンド終了後に原則5分間のハーフタイムがあります。7分間という説明は、車いすミックスダブルスなど、異なる競技形式の規定と混同しないよう注意が必要です。
Q2:もぐもぐタイムでは何のお菓子を食べますか? A2:フルーツ、ようかん、どら焼き、チーズケーキの「赤いサイロ」などが、過去の大会や報道で紹介されています。2026年のミラノ・コルティナ五輪では、フォルティウスのフルーツやバナナを食べる姿も中継で取り上げられました。全チーム共通の食品があるわけではありません。
Q3:もぐもぐタイムは必ずテレビに映りますか? A3:必ず映るわけではありません。中継する試合やカメラの配置、番組の進行などによって、放送される場面は変わります。映像で確認できない場合でも、補食をしていないと判断することはできません。
もぐもぐタイムカーリングの魅力は、選手がお菓子を食べるかわいらしい場面だけにあるのではありません。試合中盤の短い休憩を利用してエネルギーを補給し、仲間と作戦を確認し、後半のプレーに備えるという、競技の実態が見えるところにあります。
2018年の平昌五輪ではLS北見の補食風景が全国的な話題となり、「赤いサイロ」や「もぐもぐタイム」という言葉が広く知られるようになりました。2025年の日本カーリング選手権大会 横浜2025や、2026年のミラノ・コルティナ五輪でも、選手の補食は観戦の楽しみとして取り上げられています。
一方で、休憩時間は一般的な4人制では原則5分間であり、7分間という説明には競技形式の違いがあります。また、食べる食品やテレビに映る場面はチームや大会によって異なります。こうした基本を知っておくと、話題性だけにとらわれず、競技の実態を理解しながら観戦できます。
プロの視点で押さえたいのは、もぐもぐタイムを「選手の素顔が見える場面」と「競技を支える時間」の両方から見ることです。補食の内容だけでなく、休憩前後の試合展開、選手同士のコミュニケーション、後半のショットにも注目すれば、カーリングの奥深さがより鮮明になります。2026年以降の国内大会や国際大会でも、チームごとの工夫と競技力の関係に目を向けながら観戦を楽しみたいところです。
参照した公表資料: