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2026年に振り返る最高裁判所裁判官国民審査2021と夫婦別姓判決を徹底解説

小野塚 隼人 小野塚 隼人 • 更新: • 公開: • 読了約 20 分
目次

2021年6月23日、最高裁判所大法廷は、選択的夫婦別姓を認めない現行制度について、憲法に違反しないとの判断を示しました。注目すべきなのは、裁判官15人のうち4人が、夫婦同姓を例外なく求める規定の違憲性を指摘したことです。ただし、裁判上の正式な「反対意見」と、結論の一部に異なる見解を示す「意見」は区別する必要があります。

同年10月31日には、衆議院議員総選挙と同時に最高裁判所裁判官国民審査が実施されました。夫婦別姓をめぐる司法判断は、裁判官の評価や投票行動を考えるうえでも注目を集めました。2026年10月現在も、夫婦別姓制度の導入をめぐる議論は続いています。2021年の判決と国民審査を振り返ると、最高裁が判断できる範囲と、国会が担うべき役割の違いが見えてきます。

【2021年6月23日】最高裁はなぜ夫婦同姓を合憲と判断したのか

最高裁判所裁判官国民審査2021夫婦別姓

2021年の夫婦別姓訴訟で問われたのは、婚姻時に夫婦が同じ氏を称することを求める法律の規定が、日本国憲法に違反するかどうかでした。最高裁判所大法廷は、2015年の判断を変更する理由はないとして、夫婦同姓制度を合憲とする結論を維持しました。

民法750条と戸籍法74条1号が争点

訴訟の中心となったのは、次の2つの規定です。

  • 民法750条:夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称すると定めています。
  • 戸籍法74条1号:婚姻届には、夫婦が称する氏などを記載する必要があると定めています。

夫婦双方が婚姻前の氏を維持する内容の婚姻届を提出しても、現行法の要件を満たさなければ受理されません。2021年の事件でも、夫は夫の氏、妻は妻の氏を称する旨を記載した婚姻届が不受理となり、その処分をめぐって争われました。

つまり、争点は単に「夫婦が同じ姓を名乗ることに賛成か、反対か」という価値観の問題ではありません。法律が夫婦別姓という選択肢を認めていないことが、憲法上保障された権利を侵害しているかどうかが問われたのです。

憲法24条と合憲判断の理由

憲法24条は、婚姻における当事者の合意や夫婦の平等、個人の尊厳を定めています。夫婦別姓を求める側は、婚姻に伴う改姓が氏名に関する人格的利益を損ない、婚姻の自由や男女の実質的平等を妨げると主張してきました。

一方、最高裁の多数意見は、婚姻や家族に関する制度の具体的な設計は、社会状況や国民意識などを踏まえた国会の合理的な立法裁量に委ねられていると考えました。2015年の大法廷判決で示された夫婦同姓制度の合理性を、2021年時点の事情を踏まえても否定できないと判断したのです。

制度を支える理由として論じられてきたのは、氏が家族の呼称として機能すること、夫婦や親子の関係を社会的に識別する役割を持つこと、同じ氏を称することで家族の一体感を得られることなどです。また、婚姻前の氏の通称使用が広がり、改姓による不利益を一定程度緩和できることも考慮されました。

ただし、ここで押さえたいのは、現行制度が合憲であるという判断と、選択的夫婦別姓制度に合理性がないという判断は同じではないという点です。

最高裁は、選択的夫婦別姓制度を導入する政策そのものを否定したわけではありません。2021年の決定でも、夫婦の氏に関する制度をどのように設計するかは、国会で議論し判断すべき事柄だと改めて示しています。

【15人中4人】三浦守・宮崎裕子・宇賀克也・草野耕一の違憲意見

2021年の決定を理解するうえで重要なのが、裁判官の意見の違いです。最高裁大法廷は15人の裁判官で構成され、主文では抗告を棄却しました。しかし、その理由については、夫婦同姓規定の違憲性を指摘する見解も示されました。

宮崎裕子・宇賀克也・草野耕一の反対意見

宮崎裕子裁判官と宇賀克也裁判官は共同で、草野耕一裁判官は個別に反対意見を示しました。いずれも多数意見とは異なり、夫婦同姓を例外なく求める規定が憲法24条に違反すると考えました。

その背景には、氏名が個人の人格やアイデンティティーに深く関わるという考え方があります。婚姻後も自分の氏を維持したい人に対し、改姓するか、法律婚を断念するかという選択を迫る制度は、婚姻の自由や個人の尊厳を損なうという問題意識です。

また、夫婦同姓という規定自体は性別によって改姓する側を指定していません。しかし、実際には夫の氏を選択する夫婦が圧倒的に多く、女性側に改姓の負担が集中しているという実態も、違憲と考える側の重要な論拠でした。

三浦守裁判官の「意見」は何が違ったのか

三浦守裁判官も、夫婦別姓の選択肢を設けない現行制度について、憲法24条に違反するとの見解を示しました。氏名に関する人格的利益や、婚姻における自由で平等な意思決定を重視し、夫婦同姓を婚姻成立の要件とすることには問題があると論じています。

ただし、三浦裁判官の意見は、宮崎・宇賀・草野の反対意見と手続上の位置づけが異なります。三浦裁判官は、夫婦別姓を可能にする法制度が整備されていない以上、裁判所の解釈だけで新たな婚姻制度を作り、婚姻届を受理させることはできないという考えも示しました。

したがって、「15人中4人が違憲意見を示した」という説明は、規定の違憲性を指摘した裁判官の数としては妥当ですが、4人全員が同じ形式の反対意見を提出したという意味ではありません。

この区別は重要です。最高裁の判決や決定では、裁判官がどのような理由を示したかだけでなく、主文の結論に賛成したのか、異なる結論を求めたのかも分けて読む必要があります。

【2015年・2021年】夫婦別姓をめぐる最高裁判断を比較

2021年の決定は、突然示された判断ではありません。2015年12月16日、最高裁大法廷は、夫婦同姓を定める民法750条について初めて憲法判断を示し、合憲と判断していました。2021年の決定は、その先例を維持したものです。

両者の共通点は、現行制度を憲法違反として無効にする判断を採らなかったことです。一方、社会の変化や氏名に関する人格的利益をめぐる議論は、その後も続きました。

時期 出来事・判断 押さえておきたいポイント
1996年 法制審議会が民法改正案要綱を答申 選択的夫婦別姓を導入するための制度案が示された。
2015年12月16日 最高裁大法廷が夫婦同姓規定を合憲と判断 多数意見は合憲とした一方、5人の裁判官が違憲の見解を示した。
2021年6月23日 最高裁大法廷が再び合憲と判断 2015年の判断を維持。4人が夫婦同姓規定の違憲性を指摘した。
2021年10月31日 最高裁判所裁判官国民審査を実施 審査対象となった11人は全員信任された。
2025年 選択的夫婦別姓をめぐる複数の法案が国会で審議 通常国会では採決に至らず、制度改正は実現しなかった。
2026年10月 制度の在り方をめぐる議論が継続 選択的夫婦別姓制度は未導入。旧姓の通称使用を法制化する案も議論されている。

2015年の判決では、15人の裁判官のうち10人が多数意見に加わり、4人が違憲とする意見を、1人が違憲とする反対意見を示しました。2021年には、三浦裁判官の意見と、宮崎・宇賀・草野の反対意見という形で、違憲性を指摘する見解が示されています。

なお、2021年の判断では、2015年以降に女性の就業状況や国民意識が変化したことも考慮されました。それでも多数意見は、先例を変更するほどの事情の変化があったとは認めませんでした。この点に、司法判断を変えるためのハードルの高さが表れています。

【2021年の国民審査結果】対象11人は全員信任された

2021年10月31日に実施された最高裁判所裁判官国民審査では、11人の裁判官が審査対象となりました。中央選挙管理会が公表した結果を伝えた2021年11月1日の報道によると、罷免された裁判官はおらず、全員が信任されています。

対象となったのは、深山卓也、林道晴、岡村和美、長嶺安政、宇賀克也、草野耕一、三浦守、岡正晶、堺徹、渡邉惠理子、安浪亮介の各裁判官です。2021年の審査では、2017年10月の前回衆議院議員総選挙以降に任命された裁判官が対象となりました。

罷免を求める割合が高かった裁判官は誰か

弁護士ドットコムニュースが2021年11月1日に報じた集計では、罷免を求める票の割合は、深山卓也裁判官が7.85%で最も高く、林道晴裁判官が7.72%、岡村和美裁判官が7.29%、長嶺安政裁判官が7.27%と続きました。

この上位4人は、いずれも2021年6月の夫婦別姓訴訟で合憲とする多数意見に賛同した裁判官です。夫婦別姓をめぐる判断が国民審査で注目されたことは、当時の報道でも取り上げられました。

ただし、罷免を求める票が相対的に多かったことと、夫婦別姓の判決だけが投票行動を決めたことは同じではありません。国民審査では、裁判官の過去の判断や職務に対する評価など、さまざまな要素が投票に影響し得ます。投票結果だけから、特定の判決に対する国民全体の賛否を断定することはできません。

なぜ一人も罷免されなかったのか

国民審査では、罷免を求める意思を示す有権者が一定数いても、法律上の罷免要件を満たさなければ裁判官は罷免されません。2021年は、最も罷免を求める割合が高かった裁判官でも、その割合は8%に届きませんでした。

国民審査は、最高裁判所裁判官を国民が直接審査する重要な制度です。一方、制度の仕組み上、投票用紙に何も記入しない場合は罷免を求めない票として扱われます。裁判官を積極的に評価している人だけが無記入にするわけではないため、全員信任という結果を、全有権者が各裁判官の判断を詳しく検討した結果と解釈することも適切ではありません。

【国民審査の投票方法】罷免される条件と「×」の意味

最高裁判所裁判官国民審査は、衆議院議員総選挙と同時に実施される制度です。対象となる裁判官について、有権者がその職にふさわしいかどうかを審査します。通常の選挙で候補者を選ぶ投票とは、記入方法が異なります。

投票用紙には「×」を記入する

国民審査の投票用紙には、審査対象となる裁判官の氏名が印刷されています。投票方法は次のとおりです。

  • 罷免したい裁判官:その裁判官の氏名の欄に「×」を記入する。
  • 罷免を求めない裁判官:何も記入しない。
  • 「○」や氏名以外の文字など:所定の方法以外の記入は無効となる。

つまり、「信任する裁判官に○を付ける」という投票ではありません。罷免を求める意思がある場合に「×」を付け、そうでなければ空欄にする仕組みです。投票用紙の記入方法を間違えないためにも、この違いを知っておく必要があります。

国民審査で裁判官が罷免される条件

最高裁判所裁判官国民審査法32条では、罷免を可とする投票の数が、罷免を可としない投票の数より多い裁判官を罷免対象としています。ただし、投票総数が所定の選挙人名簿登録者数の100分の1に達しない場合は、罷免されません。

そのため、「有効票の過半数」という表現を使う場合は、何を分母にしているかに注意が必要です。法律上の基準は、罷免を可とする票が罷免を可としない票を上回ることです。投票用紙が空欄であれば、罷免を求めない票として扱われます。

また、罷免の効力が生じる時期についても、審査結果の公表から一律に30日後というわけではありません。同法35条では、審査の無効や罷免の効力を争う訴訟を提起できる期間が経過した後など、所定の条件を踏まえて罷免の効力が生じると定めています。30日という期間は、関連する訴訟を提起できる期間に関係するものです。

1949年に第1回の国民審査が実施されて以来、2021年まで、国民審査の投票によって罷免された最高裁判所裁判官はいません。制度が存在することと、実際に罷免という結果に至ることの間には、大きな隔たりがあるのが実情です。

【2026年の現状】選択的夫婦別姓は導入されたのか

2026年10月現在、婚姻時に夫婦のどちらか一方が氏を改めなければならない現行制度は維持されています。選択的夫婦別姓制度を導入する民法改正は成立していません。

法務省の選択的夫婦別氏制度に関する説明でも、最高裁判所は2015年と2021年の2度にわたり、夫婦同姓制度を憲法違反ではないと判断したと整理されています。同時に、最高裁の判断は選択的夫婦別姓制度そのものに合理性がないと決めつけたものではなく、具体的な制度の在り方は国会で議論されるべき問題とされています。

改姓する人の割合はどうなっているのか

内閣府男女共同参画局が公表している2024年の婚姻に関するデータでは、夫の氏を選択した夫婦は456,453組で、全体の94.1%でした。現行制度では夫婦のどちらの氏を選ぶこともできますが、実際には女性が氏を変更するケースが圧倒的に多い状況です。

婚姻前の氏を仕事上の通称として使うことは、改姓による不便を軽減する手段の一つです。しかし、通称使用が可能であることと、戸籍上の氏を婚姻前のまま維持できることは異なります。本人確認書類や公的手続きなど、戸籍上の氏との一致が求められる場面では、通称使用だけでは解決できない問題が残ります。

旧姓の通称使用をめぐる2026年の動き

2025年の通常国会では、選択的夫婦別姓制度を導入する法案や、夫婦同姓を維持しながら旧姓の通称使用を法制化する案などが審議されました。しかし、会期中に採決・成立には至りませんでした。

2026年3月に閣議決定された第6次男女共同参画基本計画では、旧姓使用の拡大について、単記も可能とする法制化を含めた基盤整備の検討が盛り込まれています。一方、夫婦の氏に関する具体的な制度については、国民各層の意見や国会での議論を踏まえて検討するという方向性が維持されています。

加えて、共同通信は2026年10月21日、政府が旧姓の通称使用拡大に関する法案について、今国会への提出を見送る方針を固めたと報じました。報道によると、政府は消費税減税関連法案の審議を優先し、旧姓使用の法制化は来年の通常国会以降に提出・成立を目指す方向です。

この動きから分かるのは、夫婦別姓をめぐる問題が、最高裁の憲法判断だけでは解決しないということです。裁判所が現行制度を違憲と判断しなかったとしても、国会が制度を改正することは可能です。反対に、制度の見直しを求める声が強まっても、法改正が成立するまでは現行制度が適用されます。

【プロの結論】国民審査は判決の結論だけでなく理由を読む

2021年の夫婦別姓訴訟と国民審査から得られる教訓は、裁判官の評価と制度改正の議論を切り分けて考える必要があるということです。

第一に、合憲判断は、現行制度が憲法に違反して無効になるほどの問題を持つかどうかについての判断です。制度を変えるべきかという政策上の問いとは区別されます。夫婦別姓制度に賛成する人であっても、最高裁が合憲と判断した理由を理解することは、議論の出発点になります。

第二に、裁判官の意見は、主文への賛否だけでは捉えきれません。三浦守裁判官のように、規定の違憲性を指摘しながらも、法制度が整備されていないことを理由に婚姻届を受理させる結論には至らない見解もあります。判決文を読む際には、多数意見、補足意見、意見、反対意見を区別し、どこに法的な違いがあるのかを確かめることが大切です。

第三に、国民審査は、裁判官を評価するための直接的な手段ですが、制度の変更を直接決める投票ではありません。裁判官の判断に異議を持つ有権者は、国民審査で「×」を付けることができます。一方、選択的夫婦別姓制度の導入を求める場合は、国会での法案審議や、国政選挙での各政党・候補者の政策も確認する必要があります。

2021年の結果では、夫婦同姓規定を合憲とした裁判官への罷免票が相対的に多かった一方、誰も罷免されませんでした。この結果は、国民審査で司法判断への評価を表明できることと、その評価が制度を変えることとは別であると示しています。

2026年現在、選択的夫婦別姓をめぐる議論は、司法判断から国会での制度設計へと引き続き焦点が移っています。判決の結論だけでなく、その理由、裁判官ごとの意見、そして立法府が担う役割まで理解することが、この問題を考えるうえでの確かな判断基準になります。

【最高裁判所裁判官国民審査2021と夫婦別姓】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:2021年の最高裁判所裁判官国民審査では、夫婦別姓に反対した裁判官が罷免されたのですか?
A1:いいえ。2021年の国民審査では11人全員が信任され、罷免された裁判官はいませんでした。罷免を求める票の割合が最も高かったのは深山卓也裁判官の7.85%でした。

Q2:2021年の最高裁判決で違憲意見を示した4人は誰ですか?
A2:三浦守、宮崎裕子、宇賀克也、草野耕一の4人です。ただし、宮崎・宇賀・草野の3人は正式な反対意見を示し、三浦裁判官は別の「意見」を示しました。三浦裁判官は、規定の違憲性を指摘しつつも、法制度が整備されていないことを踏まえ、婚姻届を受理させる結論には至りませんでした。

Q3:最高裁が夫婦同姓を合憲と判断した以上、選択的夫婦別姓制度は導入できないのですか?
A3:いいえ。最高裁の合憲判断は、現行法を憲法違反として無効にすることを認めなかったという意味です。国会が民法などを改正して選択的夫婦別姓制度を導入することは可能です。2026年10月現在、制度改正は成立しておらず、国会での議論が続いています。

2021年6月23日の最高裁大法廷決定は、夫婦同姓を定める民法750条と戸籍法74条1号を合憲と判断し、2015年の先例を維持しました。その一方で、三浦守・宮崎裕子・宇賀克也・草野耕一の4人が規定の違憲性を指摘し、裁判官の間でも憲法24条や氏名に関する人格的利益の捉え方に違いがあることが明らかになりました。

同年の国民審査では11人全員が信任され、罷免者は出ませんでした。国民審査で裁判官を罷免するには、法律で定められた投票上の要件を満たす必要があります。また、最高裁の判断と国会による制度改正は別の問題です。

2026年現在も選択的夫婦別姓制度は導入されていません。今後の動向を確認する際は、最高裁の判決文、法務省の制度説明、国会での法案審議、そして公的統計を分けて確認が必要です。判決の結論だけで賛否を決めず、裁判官が示した理由と、制度を変えるために必要な法的手続きを理解することが、夫婦別姓問題を正確に読み解くための判断基準となります。

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トレンドリサーチャー 小野塚 隼人
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